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◆お人好しのあつまり ページ3

・side.Kikuko



「ユキ。……もう、外おったら風邪引くよ?」


シャワー浴びて部屋に戻ってきたら、

ユキがベランダにおったから一瞬ヒヤッとした。


サンダルは1足しかないから

部屋の中から適当なブランケットを肩にかけたら

華奢な肩をするっと滑ってブランケットがバサッと落ちる。



「……ねぇ、」



それ以上、何も言えへんくて

やるせなくブランケットを回収したら

「キク子、」って鈴が鳴るような声がぽつり、と。



結「私が、悪かったんだよね」

「……やから、それは」

結「私が曖昧だったから、

 結局、大晴くんも正門も傷つけて。

 正門に、あんな表情(かお)させて」

「別に、ユキだけの所為ちゃうよ……」


ベランダの手すりに頭をもたれたユキは力なく首を振る。



結「……私が、正門を受け止めてあげなきゃいけなかったのにね」



泣きそうな声で呟いたユキは

そのままベランダから落ちてまいそうなくらい弱々しくて

怖くて、目が離せへんかった。



結「ごめん、正門。本当に、ごめんなさい……」

「ユキ、大丈夫やって。な?」


裸足のままベランダに降りたら

肩を震わせるユキをぎゅっと抱きしめた。


いつからおったんやろうな。


先にお風呂に入ったはずやのに、

ユキの身体はどこもかしこも氷みたいに冷たかった。


「まっさんやってきっと本気とちゃうよ。

 ただ余裕がなかっただけやって」


正直、あのまっさんに限って

ノリでソウイウ無責任なことする人じゃ絶対ないやろうけど、

今は嘘でもそう言っとかな

ユキがこれ以上追い詰められたら、

ほんまに何やるか分からへんから。


冷え切った肩をもう一度ブランケットで包んで

「部屋入ろ」って言うたらユキはこくっと頷いて。


窓とカーテンを閉めとったら

ユキはベッドの上で小さく膝を抱えながら、



結「キク子、あのね」

「ん?」

結「正門がね、あの時言ってたの」

「なんて?」


ざわざわと嫌な予感がしつつも、

ユキにはそれを見せへんように隣に腰かけて背中をさする。



結「……『こんまま、俺らの子供ができたらえぇのに』って」



さすってた手が、思わず止まった。



視線のひとつすら動かすのが躊躇われて、

身体が緊張してる。



何を言うべきか、言わないべきか。


私の浅はかな言葉なんてきっとユキには見透かされてまうやろうから。


溢れてしまいそうな気持ちに必死に蓋をして、

ユキの背中を引き寄せたら強く抱きしめるしかなかった。

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マリア(プロフ) - ろにくまさん» ろにくまさんお久しぶりです!現実逃避の場にしてくださってたのに不甲斐ない事になりすみせん。私にとってはろにくまさんのコメントが暖かくて今も嬉しくて仕方ありません。過去作はバリバリ書き直してますのでそのうち必ず戻ってきます。その時はぜひまた。 (3月28日 2時) (レス) id: 98df0cf24d (このIDを非表示/違反報告)
ろにくま(プロフ) - 長くなってしまいましたが、どうか無理をなさらず、マリアさんにも私にも彼にも彼らにも、幸せが訪れることを祈っております。 (3月26日 1時) (レス) @page7 id: 2f3320c7da (このIDを非表示/違反報告)
ろにくま(プロフ) - マリアさんが大切にこの物語を綴ってくださるおかけで、キミ恋!は私の現実逃避の場となっていました。私のような読者の拠り所になれる、暖かい場所を作ってくださりありがとうございます。 (3月26日 1時) (レス) @page7 id: 2f3320c7da (このIDを非表示/違反報告)
ろにくま(プロフ) - お久しぶりです。私もあの日から年末に感じた苦しさとはまた違った苦しさを感じております。彼以外を好きな方との気持ちの差や5人で進む現実に潰されてしまいそうな日々です。 (3月26日 1時) (レス) @page7 id: 2f3320c7da (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:マリア | 作成日時:2024年3月9日 0時

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