検索窓
今日:114 hit、昨日:1,254 hit、合計:20,898 hit

ページ19





強張った声はまるで何かに怯えてるみたいにも聞こえた。


小刻みに揺れる瞳が見てるんは俺やけど

俺やなくて、



「ユキさん大丈夫やで。俺は何もせぇへんから」



手のひらを上にして両手を差し伸べる。


確か相手に心を開いてる時の仕草やって

エリーから聞きかじっただけの豆知識やけど、

今はそんなんでもユキさんが安心してくれたらよくて。


俺の両手を見ながらユキさんがぎゅっと唇を噛む。



結「……触れない、よ」

「なんで?」

結「私は、汚いから」



くしゃ、


苦しそうに顔を歪めるユキさんに胸の奥が音を立てる。



やっぱし何回聞いてもしんどいもんやな。


好きな人が自分のこと「汚い」なんて言うんは。



切なくて、


虚しくて、



「俺は、俺が知っとるユキさんを汚いなんて思ったことないで」



キミは出会った時からずっと綺麗で、


それは見た目の話だけちゃうくて、


仕草とか、


考え方とか、


ユキさんを形作るもの全部が

俺には雪の結晶みたいにきらきら綺麗に見えとって、

愛おしくてたまらんのに、



結「それは……キミに見せたくなかったから。

 私の醜いところも、浅ましいところも、エゴも。

 何も、知ってほしくなかったから。

 だから、」



そこで言葉を止めてユキさんが俯く。


握りしめた小さい手が膝の上で震えとって、



結「私は、キミに想われるような人間じゃないんだよ……」



あぁ……、哀しいな。



「そうやって、ずっと自分のこと傷つけてきたん……?」



俺が好きな人は、俺の好きな人のことをずっと攻撃しとって。


ただ見とるだけなんてやっぱりイヤで、



「ユキさん、」



握りしめた拳を手で包みこんだら

「あ、」って逃げようとするんをしっかり捕まえる。


あかんよ、いかんといて。



結「大晴くん、だめっ」

「ユキさんはひとりぼっちやないで」

結「えっ……」



ハッとしたように俺を見たユキさん。



「ユキさんが汚いって自分のこと思うてるんなら、

 俺がおんなじだけユキさんの好きなとこ言います。

 ユキさんにどんな過去があっても

 今のあなたがどんだけ綺麗か俺がいっぱい言葉にするから。

 やから、」



まっすぐ見つめる瞳がゆらゆらしてた。



「もう1人で苦しまないでください。

 ユキさんのしんどいこと、

 俺が全部吹き飛ばして笑顔にしますから」


結「大晴、くん、」



少しずつ潤んでいったユキさんの瞳から、

つぅ……と綺麗な涙が零れた。

▼〇『欲動』とは-Blue.→←〇ただ、キミを包みこむ体温を。‐Orange



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (66 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
370人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

マリア(プロフ) - ろにくまさん» ろにくまさんお久しぶりです!現実逃避の場にしてくださってたのに不甲斐ない事になりすみせん。私にとってはろにくまさんのコメントが暖かくて今も嬉しくて仕方ありません。過去作はバリバリ書き直してますのでそのうち必ず戻ってきます。その時はぜひまた。 (3月28日 2時) (レス) id: 98df0cf24d (このIDを非表示/違反報告)
ろにくま(プロフ) - 長くなってしまいましたが、どうか無理をなさらず、マリアさんにも私にも彼にも彼らにも、幸せが訪れることを祈っております。 (3月26日 1時) (レス) @page7 id: 2f3320c7da (このIDを非表示/違反報告)
ろにくま(プロフ) - マリアさんが大切にこの物語を綴ってくださるおかけで、キミ恋!は私の現実逃避の場となっていました。私のような読者の拠り所になれる、暖かい場所を作ってくださりありがとうございます。 (3月26日 1時) (レス) @page7 id: 2f3320c7da (このIDを非表示/違反報告)
ろにくま(プロフ) - お久しぶりです。私もあの日から年末に感じた苦しさとはまた違った苦しさを感じております。彼以外を好きな方との気持ちの差や5人で進む現実に潰されてしまいそうな日々です。 (3月26日 1時) (レス) @page7 id: 2f3320c7da (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:マリア | 作成日時:2024年3月9日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。