〇ただ、キミを包みこむ体温を。‐Orange ページ18
・
「はぁッ、あっ、はぁッ……！」
いつか、2人でずぶ濡れになりながら帰った道を
息を切らしてただ走った。
何も考えられへんくらいがむしゃらに。
やのに頭ん中は溢れてまいそうなくらいいっぱいいっぱいで。
階段を一気に駆け上がって
忘れてなかったその部屋の前に立ったら、
なに話そう、とかそんなん考える前にピンポンを押してた。
今はただ、ただ“キミ”に会いたいから。
顔見て、
抱きしめて、
後のことはその後考えればえぇから。
だから、
しん、と何も聞こえない一瞬に自分の心臓の音が響く。
おらんのかな……。
詰まってた息がため息に変わりそうやった瞬間、
ドタッ、
中から聞こえた物音に
ほんまに一瞬、息が止まった。
まさかって嫌な予感がして、
「ユキさん！？大丈夫ですか！ユキさん開けてください！」
思わずドアをどんどん叩いて名前を呼んだら、
……ガチャ、
ゆっくり扉が開いてそこにおったんは、
「……ユキさん」
曇ってたキミの瞳が、俺を見て大きく開く。
結「大晴くん、」
俺の名前を呼んだ声は少し震えとって、
「ユキさん、」
その後に続けたい言葉はいっぱいあったはずやのに、
気づいたら、ぎゅう、とユキさんを抱きしめてた。
すっかりやつれてもうた身体は怖なるくらい冷えきってて、
ほんまはもっとぎゅうぎゅうに抱きしめたいけど
そんなんしたら、
ほんまに雪みたいに溶けて消えてまう気がして。
やからせめて隙間がないくらいぴったりくっついて
俺の体温を全部あげるくらいすっぽりユキさんを包みこむ。
いっそ、俺とユキさんを半分こにできたらえぇのにな。
そしたら嬉しいことも悲しいことも半分こやのに。
そんな突拍子もないこと考えながら、
2人とも何も言わんとただ抱きあって。
どれくらいそうしてたんやろ。
カツン、カツン
―……でさぁ、今日バイトでさぁ(笑)―
階段を登ってくる能天気な足音にようやく身体を離したら、
ユキさんは瞳をゆらゆらさせて俺を見た。
「ユキさん、……おしゃべりしませんか？」
結「……うん」
小さく頷いたユキさんにぎこちなく手招きされて部屋に入る。
あの時と変わってない部屋の真ん中で向かい合って座ったら
ふわり、とあん時とは違う、
やけど知ってる人の匂いがした。
結「大晴くん……、どうして」
感情を押し殺した声でユキさんが言葉を紡ぐ。
結「どうして、来たの……」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 370人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
マリア(プロフ) - ろにくまさん» ろにくまさんお久しぶりです！現実逃避の場にしてくださってたのに不甲斐ない事になりすみせん。私にとってはろにくまさんのコメントが暖かくて今も嬉しくて仕方ありません。過去作はバリバリ書き直してますのでそのうち必ず戻ってきます。その時はぜひまた。 (3月28日 2時) (
レス) id: 98df0cf24d (このIDを非表示/違反報告)
ろにくま(プロフ) - 長くなってしまいましたが、どうか無理をなさらず、マリアさんにも私にも彼にも彼らにも、幸せが訪れることを祈っております。 (3月26日 1時) (レス) @page7 id: 2f3320c7da (このIDを非表示/違反報告)
ろにくま(プロフ) - マリアさんが大切にこの物語を綴ってくださるおかけで、キミ恋！は私の現実逃避の場となっていました。私のような読者の拠り所になれる、暖かい場所を作ってくださりありがとうございます。 (3月26日 1時) (レス) @page7 id: 2f3320c7da (このIDを非表示/違反報告)
ろにくま(プロフ) - お久しぶりです。私もあの日から年末に感じた苦しさとはまた違った苦しさを感じております。彼以外を好きな方との気持ちの差や5人で進む現実に潰されてしまいそうな日々です。 (3月26日 1時) (レス) @page7 id: 2f3320c7da (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：マリア | 作成日時：2024年3月9日 0時
