◆独り言 ページ17
・side.Richard
ガチャ、
虎丸達に適当な頼み事して先に戻った稽古場の扉を開けたら、
いつからそうしとったんか
稽古場の真ん中で正門が独りぼっちで項垂れてた。
「……自分、メシ食うたん？」
俺の質問にギリ分かるくらい小さく首を振るから、
そうやろうな、と思いながら
横にしゃがんで購買で買ってきたパンを置く。
「好き嫌い分からんから俺の好きなん選んだけど、」
かさ、とビニールが擦れる音に正門の頭が微かに動いた。
良「……リチャ君の差し金ですか、」
「なにが？」
良「これ、」
目の前に置いとった青いリボンのかかった箱に
正門の指先が触れる。
「いや、俺は何も知らんで。
第一、俺がそんなん企めるやつやと思うか？」
おどけて言うた俺の台詞に
「そらそうか、」ってくすっと笑った正門。
失礼なやっちゃな。
まぁ、笑う元気があるってことで今日は許しといたるわ。
良「ねぇ、リチャ君。
俺はどこから間違えとったんでしょうね……」
綺麗に結んであるリボンの結び目をそっとなぞりながら
ぽつ、とそう呟いた声はか細く震えとって、
良「……あの時、結城を助けたんは間違いやなかったって
今でもそう思うてるけど、
もぉ、俺には善も悪も区別つかへんようなってまいました、」
自嘲するような正門の言葉に
余計な口出しはせずに黙って耳を貸す。
同情したってきっとほんまに同情なんかできひんし、
正門だってそういうんを求めてる訳ちゃうやろうから。
良「……結局、俺も酒寄と同じやったんかも知れません。
自分の欲望で結城のことをぐちゃぐちゃにして、
慕ってくれた子も泣かせて。
ほんま、こんな醜いヤツがよぉ舞台に立てるわ……」
乾いた声で嗤った正門の表情は
だらりと垂れた黒髪に隠れて分からへん。
それやけど、
俺にこんな“独り言”を溢してまうくらいには
正門も限界やったに違いなくて。
―どっちかに重さが傾いたら
途端にうまくいかなくなっちゃうから―
その台詞がふと頭を過った。
やっぱすごいわ、
「まぁ……俺は何があったとか知らんし、
プライベートは各々自由でえぇと思ってるけどさ。
……けど、正門が芝居しとる姿はけっこう好きやで。
俺も、多分他のやつらも」
清風とちゃうから俺にはこれぐらいしか言えへんけど。
それでも気持ちが届くように
微かに震える正門の背中を不器用にそっとさすった。
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マリア(プロフ) - ろにくまさん» ろにくまさんお久しぶりです！現実逃避の場にしてくださってたのに不甲斐ない事になりすみせん。私にとってはろにくまさんのコメントが暖かくて今も嬉しくて仕方ありません。過去作はバリバリ書き直してますのでそのうち必ず戻ってきます。その時はぜひまた。 (3月28日 2時) (
レス) id: 98df0cf24d (このIDを非表示/違反報告)
ろにくま(プロフ) - 長くなってしまいましたが、どうか無理をなさらず、マリアさんにも私にも彼にも彼らにも、幸せが訪れることを祈っております。 (3月26日 1時) (レス) @page7 id: 2f3320c7da (このIDを非表示/違反報告)
ろにくま(プロフ) - マリアさんが大切にこの物語を綴ってくださるおかけで、キミ恋！は私の現実逃避の場となっていました。私のような読者の拠り所になれる、暖かい場所を作ってくださりありがとうございます。 (3月26日 1時) (レス) @page7 id: 2f3320c7da (このIDを非表示/違反報告)
ろにくま(プロフ) - お久しぶりです。私もあの日から年末に感じた苦しさとはまた違った苦しさを感じております。彼以外を好きな方との気持ちの差や5人で進む現実に潰されてしまいそうな日々です。 (3月26日 1時) (レス) @page7 id: 2f3320c7da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：マリア | 作成日時：2024年3月9日 0時
