〇初めまして、王子さま。‐Blue ページ10
・
―こんにちわぁ！すいません、今お時間あります？―
「えっと、あのっ」
―テニスとかってきょーみありません？―
「え、いや、その、」
―君、新入生っしょ？ちょっとだけでえぇから！―
「ちょっと……、」
―ほんまにちょっと！な、えぇやろ？―
「……はい、」
こんな私が、昔から大っ嫌いだった。
押しに弱くって、
断れなくて、
すぐ人に流されて、
これでよかったのかな？っていつもオドオドしてばっかり。
本当はこの大学だって
先生に勧められて何となく受けたら、たまたま受かっただけで。
―で、活動はだいたい月2くらいでぇ……―
私、本当にこれでよかったのかな？
・
―ほんならこれ新歓の時持ってきてな！よろしくぅ！―
よく聞いてなかったけど一応もらった新歓の受付票を握って
また、人でごった返す新歓ブースをとぼとぼ歩く。
お願いします、
もう声かけないでください。
このまま透明人間になりたい。
私、透明人間。
透明人間、
―こんちわぁ！―
……透明人間にはどうやらなれなかったみたいです。
―君かわえぇなぁ♡ちょっとこっち来てよ―
「え、きゃあっ！」
ぐい、と人の少ないブース脇に引っ張られて頭が真っ白になっちゃう。
ど、どうしよう。
これもサークルの勧誘なのかな？
金髪にピアスをいっぱいつけたお兄さんが
ぐいって顔を覗き込んでくる。
―君、1年生やろ？―
「は、はい……、」
ジロジロ見てくる視線がちょっとだけ気持ち悪い。
でも、初対面の人にそんな事思っちゃ失礼だよね……？
―なぁ、恋愛とかきょーみない？
俺ら恋愛実践サークルってサークルやってんねんけど
よかったら今から見学来ぉへん？―
「えっと、あの、」
どうして肩に腕を回すんですか？
そんな事言える雰囲気じゃとてもないけど。
どうしよう、ちょっと怖い。
どうしよう、
？「あ、みっけた」
「ひゃっ、」
急にお兄さんの腕の中から引っ張られたと思ったら
ぽすっ、と何かに抱き留められて。
こ、今度はなに？
？「お嬢さん、うちのブースに筆箱落としてったやろ？
預かってるからはよ取り行こ」
「え、筆箱？」
私、一回もバッグから出してないのに、
「あの、人違いじゃ」
？「ちょっと走んで」
「え、ひゃぁ！」
―あっ、こら待てや！―
顔もよく分からないお兄さんに手を引かれるまま走ったら
怖いお兄さんはあっという間に見えなくなっちゃった。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年8月11日 17時
