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良「ぷっ、はははっ！(笑)なによ“ハレンチ”って！」
「ひぃっ！」
もうやだ！
今すぐにでも穴掘って埋まっちゃいたい……！
お腹抱えて大爆笑してる正門先輩とは反対に
恥ずかしすぎて泣いちゃいそうで。
良「エリーちゃん、初心やなぁ(笑)」
「だ、だって……っ！」
あんな生々しいお芝居観たことないもん！
いつものカオスな2.5次元舞台とは別物すぎて、
全然、こんなの、こんなのっ！
良「あーごめんごめん(笑)恥ずかしかったなぁ？」
「うぅ……」
良「ははっ、やっぱしかわえぇ(笑)」
そう言って、よしよし頭を撫でられるのもまだ恥ずかしいけど。
だけど、お芝居の台詞の「かわえぇ」じゃない
自然な「かわえぇ」は心地よくって、少しほわほわする。
良「演劇に興味持ってくれた？」
「はい、……とっても」
良「そっか、ほんならよかった」
頭の上から聞こえる正門先輩の声は優しくて
俯いてた視線がゆっくりあがって。
ドキドキする。
この気持ちが何かなんてまだ分からない。
だけど、このドキドキはすごくキラキラしてて、だから、
「……あの、衣装を作ったりってお話したんですけど、
実は、コスプレの事なんです。それでも、いいですか？」
良「もちろん、コスプレやって立派な衣装やん」
「全然、素人クオリティーです、けど」
良「えぇよ、お裁縫できひん俺らやって
針で指先血染めにしながら衣装直ししたりするしな」
「そ、そこまではないかも知れません……」
良「ははっ、ほんなら上等やわ(笑)」
頭にあった手が離れて骨張った手が目の前に差し出される。
良「ようこそ演劇部へ。これからよろしくな、エリーちゃん」
「はい、……よろしくお願いします」
おずおずとだけど、自分から伸ばした手を
正門先輩がしっかり握ってくれて、
その時、本当に世界がワントーン明るくなったように思えた。
―まっさぁん！ミーティング始めるってー！―
良「あらら、時間やな。
ほんなら水曜日の18時に部室までおいで、俺が連れてくから」
「分かりました」
良「よろしい。じゃあ気ぃ付けて帰りや、エリーちゃん。
また悪い人についてったらあかんよ？」
「ふふっ、はい(笑)」
「またね」って笑った正門先輩の下駄の音が聞こえなくなってから
ふぅ、と深く息を吐く。
握った手のひらは、まだ熱を持ってて。
「……まさか、」
もしかして、このキラキラの正体は“一目惚れ”ってものなのかな。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年8月11日 17時
