キミに恋するワンシーン！ (ページ41)

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キャスト紹介の一番最初に正門先輩の顔写真とプロフィールが乗ってて、

つい、マジマジと読みこんじゃう。

「『初めて主演をさせてもらうので緊張していますが、

　主人公の飄々とした雰囲気が出せるように精いっぱい頑張ります。

　こんな艶っぽい作品を初主演にしてくれた鬼畜な脚本と

　主演に引っ張り上げてくれた同期達に感謝です。』

　脚本……へぇ、女の人が書いたんだ……」

名前だけ載せられたプロフィールも

隅々まで読んで予習はばっちり。

それにしても、18人しか部員いないんだ。

その人数で舞台を創るって本当に大変そう……。

そんなことをぼんやり考えてたら、会場がざわざわしてきて、

ブーッ……

良『本日は、第21回七夕公演『欲動』に

　お越しくださいまして誠に有難うございます。

　開演に先立ちましていくつかお願い申し上げます……』

はちみつみたいな甘い声の会場アナウンスに

嬉しそうなひそひそ声がそこら中から聞こえてくる。

さっきの女の子達かな……？

良『さて、作品のタイトルにもなっています

　『欲動』とはなんでしょうか。……』

“欲動”

たまたま、この間受けた精神分析の授業でこの言葉が出てきて

確か、

『人が何かしらの行動を起こす時にその根本にある無意識下の衝動』

とかなんとか。

専門的な意味までは分からなかったけど、

そのワードを聞いた時、自然と正門先輩を思い浮かべてた。

もしかして、

今こうして舞台を観に来ていることも

私の欲動だったりするのかな……？

なんて思った瞬間、会場の電気が暗転して

ブーッ……

独特の重点音と一緒にゆっくり幕が開いていった。

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良「せーのっ！」

―ありがとうございましたぁ！！―

大きな拍手に包まれながら役者の人達が一列にお辞儀をする

その真ん中で

誰よりも深く頭を下げる正門先輩から目が離せなかった。

“そんなかわえぇ顔しちゃあかんよ？もっと困らせたなるから”

“えぇよ、沈んでも。俺も一緒に堕ちてあげる”

“怖い？俺のことが？それとも溺れていく自分が？”

女性達に向ける台詞のひとつひとつが本当に艶っぽくて、

まるで秘密の逢瀬を盗み見たような背徳感と高揚感に

胸がずっとドキドキして。

特に、露子さんから心中を迫られてからのラストシーンは

こんなものを見てもいいの……？って

身体のまだ知らないところがソワソワして

ちょっと怖いくらい、物語の世界に引きずり込まれてた。