〇“妹みたい”は恋煩いの呪文-Red ページ4
・
―じゃあ阿立さんまたね！―
「うん、また授業でね」
演劇部の部活説明会にたまたま来てた同じ学科の子に手を振って
すっかり暗くなったホール棟の前でちょっと溜息を吐く。
「阿立さん、かぁ……」
大学に入学して2週間とちょっと。
高校までのお友達が誰もいない大学生生活は
まだちょっぴり緊張してて。
「誠也くん、まだかなぁ……」
手持ち無沙汰に買ってもらったばかりの腕時計を見てみる。
こんな遅い時間に外にいることだって
いけないことしてる気がして、ほんまはドキドキで。
―あれ？阿立さん、やんな？―
「え？あっ、えっと、」
ホール棟から出てきた背の高い顔立ちのハッキリした男の子は
見覚えがあって、一生懸命思い出してみるけど、
健「……おん、無理そうやな(笑)
同じ学科の小島健です。よろしく」
「あ、小島くん。ごめんね、なかなか覚えられへんくて」
健「そら150人もおる学科やししゃーないやろ(笑)」
「でも、小島くんは覚えててくれたのに」
健「おん。かわえぇ子おるなぁって思って覚えてた」
「えっ！は、恥ずかしい……っ」
健「これも何かの縁やし、“こじけん”で覚えてや。
俺も“あだっちー”って呼ぶから」
「あ、あだっちー？」
目をぱちくりしたら小島くん、あ、こじけんが
「嫌やった？」って聞くから慌てて首を振る。
健「なら決まりやな。
ところで、あだっちーも演劇部の説明会おったん？」
「うん、知り合いがいて。それで」
健「へぇー。入るん？」
「うーん、……まだ、悩み中？」
健「おぉ、そっかそっか(笑)」
「こじけんは入るの？」
健「まだ分からん。
この大学めっちゃ演劇系のサークルあるから
全部見てからと思うてたけど
たいせーが急に演劇部入る！って入部届出してもうたから、」
誠「あ、Aおった」
「あっ、……誠也くん！」
大好きな声がして振り返ったら、やっぱり誠也くんで。
誠「え、小島やん。何、2人知り合いなん？」
健「げ、」
誠「『げ、』やあらへんわ。お前やろさっき茶化してきたの！」
健「えー私ニホンゴワカリマセン？」
誠「はぁ、ほんま……。
あ、福本に入部届受理したからって言うといてくれへん？」
健「えっ、いいんすか？」
誠「まぁ、なんか動機が不純な気もするけど、一応。
そん代わり、なんかやらかしたらクビにすんで？」
まっすぐこじけんを見つめる誠也くんの瞳は
やっぱり演劇に真剣で、カッコいい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 169人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：マリア | 作成日時：2023年8月11日 17時
