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誠「俺はハンバーグプレートにしよっかな。Aは？」
「うーん、じゃあチキンソテーにする」
誠「分かった。すみません、注文お願いします」
カフェのテラス席でふぅと息をついた私を見て
「めっちゃ疲れてるやん」ってけらけら笑ってる誠也くん。
「だって、楽しいんやもん」
誠「はは、それやったら誘った甲斐があったわ(笑)」
水のグラスを傾けながらにこっと笑う誠也くんは
やっぱりカッコよくて、つい口元が緩んじゃう。
誠也くんとここに来れて、ほんとによかった……。
夢みたいな気分で誠也くんを見つめてたら、
誠「なぁ、A」
急に誠也くんが改まった声で呼ぶから、私も慌てて姿勢を正す。
「なに？誠也くん」
誠「Aはその……、部活とか決めたん？」
そう切り出した誠也くんの表情は、すごく真剣で。
あ、そうやった。
その話もしなきゃいけないよね……。
夢気分がすっと抜けて、じっと誠也くんを見つめる。
「あのね、誠也くん。
私、……やっぱり演劇部に入るのは辞めとこうかなと思う」
そう言ったら、
誠也くんの顔はちょっとだけほっとしてた。
そうだよね。
きっとそんな顔するんやろうなって、分かってたもん。
「今は勉強とか学校生活に慣れることが優先かなってのもあるし、
ただ誠也くんの幼馴染やからって理由で演劇部に入るのは、
本気で演劇をしてる人達に失礼だと思うから」
誠也くんがどれだけ真剣に演劇と向き合ってるか。
それは誰より理解ってるつもりやし、
誰よりも理解ってあげたいからこそ
私は、そこにいるべきじゃなくって。
「ごめんね、せっかく説明会も聞きに行ったのに」
誠「ううん。正直今、めちゃくちゃほっとしてるから(笑)」
小さく首を振って誠也くんが微笑む。
誠「Aにはあんま見せへんようにしてるけど、
俺けっこう言葉きついし、愛想も悪いし。
演劇とか部活のことになったら嘘つけへんからさ。
そういうとこ見て幻滅してほしくないっていうか、」
急に言葉を切った誠也くんはふいっとそっぽを向いて、
誠「……カッコええとこだけ、Aには見とってほしいから」
呟くみたいな小さな声を聞き取った瞬間から、
胸がきゅうって苦しくなった。
「誠也くん……、」
そんな、今更やのに。
どんな誠也くんもずっとカッコよくて、キラキラしてて。
どうしたたら伝わるかな。
私が誠也くんのこと大好きな気持ちが、全部。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年8月11日 17時
