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正門先輩が席に戻ってってもまだ胸がもやもやしとって。
末澤先輩の声入らんかったら
2人、ほんまにキスしそうやなかった？
え、さすがに冗談やんな？
隣の席に戻ったユキさんを盗み見しても普通の顔してるから、
やっぱ気のせいよな、って
ようやく気分もちょっと落ち着いた。
結「よかったね、“大晴”呼びの先輩がまた1人増えて(笑)」
「まぁ、そぉっすね……」
俺は別に、ユキさん専用でもよかったけど。
結「正門は優しいしお芝居のことも詳しいから、
何かあったら相談したらいいよ」
「あの、やっぱし俺が主役やるんですか……？」
そんな、舞台に立った経験なんて
こじけんと高校の文化祭でやったコントと劇ごちゃまぜにしたような
なんか分からんけどバカ受けしたやつぐらいやのに。
結「うーん、新入生のお披露目って意味合いの公演だからねぇ。
役者以外でもこれ！って分かればいいとは思うけど……」
唇尖らせながら悩んでたユキさんが
ふいに「あ、」って呟く。
結「だったら、
自分の表現したい世界を自分で1から創る、っていうのはどう？」
「えっ……？」
世界を自分で創る……？
どういう意味？
結「大晴くん、よかったら脚本やってみない？」
「えっ、俺が？」
うんうんって力強く頷いてるユキさんはかわえぇけど
俺が脚本って、
「やけど俺、話なんて書いたことないですよ？」
結「大丈夫。私が大晴くんに全部教えるから」
「えぇー……、」
ユキさんにマンツーマンで教えてもらえんのなら
それはそれでありかも知らんけど……。
でも、そっか。
1人しかおらんなら、全部俺がしなあかんもんな。
ひと通り出来ひんと先輩になった時困るよな。
もう、俺も演劇部の一員なんやし。
「……全部、教えてくださいよ？」
結「うん、約束する」
そう言ったらぴん、と小指を立てて、
結「指切りしよ、」
「えっ、あ、はい」
言われるまま出した小指にユキさんの細い指が絡んで、
結「指切りげんまん、嘘ついたらお願いごと何でも聞きます。
指切った！」
ほどけた指先が熱を持ってジンジンしてる。
「お願いごと何でもえぇんですか？」
結「あ、お金出せ！とかはだめだよ？」
「そんなんしないですって(笑)」
誠「そこー、次喋ったら廊下出すでー」
あ、あかん。
定例会中ってことすっかり忘れてた(笑)
ちらっと目があっていたずらっぽく笑ったユキさんは
さっきよりずっとかわいく見えた。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年8月11日 17時
