〇◆縮まる距離‐Orange ページ17
・
誠「集合ー、定例会始めんでー」
―はぁい―
いつもよりゆるい末澤先輩の号令で始まる部活。
今日は月末の活動報告的なもんらしくて
先輩らは所属するセクションごとに座ってるけど
まだどこにも入ってない俺はひとりぼっち。
こじけんはお笑い研究会の見学行くって来んかったし、
ちょっと寂しいな、えぇん。
ほんま、はよ活動始まらへんかなぁ……。
けど俺どのセクション入るん？
一番分かりやすいのは役者やけど、俺そんな人前に立つタイプちゃうし。
顔はまぁまぁイケてると思うけど。
「先輩、今日も来ぉへんのかなぁ……」
机に突っ伏して、誰にも聞こえんくらいのひとり言。
俺の心を奪ったマドンナ(ってこじけんは呼んでる)こと結城先輩には、
あの説明会以来、1回も会えへんまんまで。
6月にやる七夕公演の打ち合わせとか言うてたけど、
そうなると俺のモチベもちょっと落ちちゃう訳で。
「はぁ……」
誠「福本ー、退屈なんは分かるけど顔あげぇ。活動報告中やで」
「はぁい、」
ってか、俺なんか末澤先輩にやけに噛みつかれてる気ぃすんねんけど。
入部届出した時も、
「え、そんな嫌がります？新入部員ですよ？」ってくらい
ガン見されとったし。
やっぱ、勢いだけで入ったらダメやったんかな。
いや、それはあかんか。どう考えても。
「はぁ……」
誠「やから、福も……もうえぇか。じゃあ次、美術ー」
やっぱ辞めちゃう？
けど、先輩ら優しいしなぁ(末澤先輩以外)
こじけんも入るかも知らんし、
どうしたらえぇんやろ、俺。
・
ふわふわ
頭がぼんやりする、気持ちえぇなぁ。
ぽん、ぽん
ん？誰か俺の髪の毛触ってる……？
くすぐったいな、
こじけんかなぁ……。
―おーい、おはよ―
「おはよぉ……」
―隣、座っていい？―
「えぇよぉ……」
いや、こじけんやったら勝手に座ってるやろ。
ってかこじけんが俺の髪さわさわしてんのめっちゃキモない？
あ、あかん。
これもう目ぇさめるやつや……、
「んん、ん……」
結「よく寝てたね、おはよ」
「おはよぉござ、……うえぇっ！？」
誠「福本ーうるさい、」
末澤先輩の冷たい視線も今はそれどころちゃうくて。
待って、隣におる！
「結城先輩……？」
結「あらら、怒られちゃった。ごめんね？ビックリさせて」
申し訳なさそうに眉をさげる結城先輩が
俺のすぐ隣の席に座ってて。
え、なんでおるん？
夢ちゃうよな？
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作者名：マリア | 作成日時：2023年8月11日 17時
