・ ページ13
・
良「今更やけど一応自己紹介しとくな。
お嬢さんのお名前は？」
「あ、江里口Aです。文化言語学部心理学科の1年です」
良「へぇ、
そんな世間話から始まった演劇部の説明は
どのサークルの勧誘よりも分かりやすくて、楽しくって。
「水木金の放課後から3時間なんですね、」
良「そ、慣れへんうちは長いやろけど、
稽古始まったら逆に足りひん！って長なることもあるから(笑)」
巽「よぉ言う(笑)それ1番言うてんの誰や思ってんの？」
良「えぇ？あれはみんなの総意のもとやってるんちゃいますの？」
巽「はいはい、この芝居バカめ」
脚本の巽先輩との漫才みたいな言い合いも、
きっと仲がいいから出来るんだろうなぁ、ってちょっとうらやましい。
みんなで1つの舞台を創るんだもん。
すごく大変だろうけど、きっと楽しいんだろうな。
もらった手作りのパンフレットを見ながら、
いいなぁ、って思ってる自分に気づく、けど、
また、流されてるだけなのかな……。
良「あ、1個あげるん忘れとった。
これ、6月にやる七夕公演のチラシやねんけど良かったら」
「あ、ありがとうございます！……『欲動』？」
艶っぽい筆で書かれた題字と
暗がりに佇む浴衣姿の男の人の後ろ姿がすごく綺麗で、
「あれ、もしかしてこの人って」
良「あはは、はい。正門です(笑)
今度主役させてもらうねん。
やから良かったら観に来てほしいなぁって」
「い、行きます！……絶対行きます、」
これを観なかったらきっと後悔する。
思わず身を乗り出して返事をしちゃったら、
正門先輩はにこっと嬉しそうに微笑んだ。
良「ありがとぉ。
エリーちゃんが来てくれたら俺も公演頑張れそうやわ」
「え、エリー？」
良「ふふっ、お名前が江里口ちゃんやったから
“エリーちゃん”って呼んでみた。
苗字で呼ぶんも味気ないしなぁ、イヤやった？」
「いえ！そんなことないです、けど」
そんなかわいいあだ名で呼ばれるような人間じゃないです、私。
なんて正門先輩に言える訳もなく、
良「エリーちゃん」
「はい、」
良「劇場で待ってるから、会いに来てな？」
どうしよう。
こんな人今まで出会ったことない。
この人になら流されてもいいかも……。
なんて思えちゃう、
「……はい」
そんな王子さまには。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 171人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：マリア | 作成日時：2023年8月11日 17時
