キミ、カオル。I【すとぷり】

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ある会社の給湯室。


秘書課の制服に身を包み、いつもより丁寧にケアした髪と大人なメイク。


とっておきの紅茶を淹れる。


部屋いっぱいに高貴なカオリが広がる。


私は指先を耳に当てる。



「準備完了。今からターゲットに接触します」


「了解です。監視カメラのハッキング終了。映像切り替わってます」



るぅとくんの声が聞こえる。



「さぁ、A。1発かまして来な」


「うん！行ってきます！」



なーくんの声に押されて私は紅茶をお盆に乗せ歩き出す。


昨日なーくんがくれた時計は指を耳に当てるだけで通話ができるという優れ物。


しばらく歩いてたどり着いた社長室の扉。


たくさんの監視カメラが私を写している。




けど、るぅとくんのハッキングにより私の姿絶対に記録されない。




今日、この時、この瞬間。





私がここに訪れたことは誰も知らない。



3回のノックの後、「入れ」と若い男の人の声がした。




「失礼致します」




扉を開けると社長席に人影はなく手前のソファに座るターゲットを見つける。



「お疲れ様です。本日の紅茶をお持ちしました」



私はソファ前の低い長机に近づき膝をついてカップに紅茶を注ぐ。


広がる紅茶のカオリ。


このカオリは相手の思考力を奪う。



「……新人か？」


「はい。本日付で秘書課配属となりました。よろしくお願い致します」



私はふわっと笑う。


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