キミ、カオル。I【すとぷり】

△20 ページ20

.

side…さとみくん

.

誰かにこんなに触れたいと思ったのは初めてかもしれない。


今までたくさんの女を落としてきた。


なんとも思わなかった。



「……良かった」



自然に頬が緩んだ。


キミが少し目を見張った。


何そのちょっとアホっぽい顔。



すごく、すごく……いじめたくなる。



もう一度キスをしようとした瞬間。


視界が真っ暗になる。


ふわっと唇に優しい温もり。


数秒後、視界が開けると両手を顔の前で交差させたキミ。




「ギブです……」




微かに耳に届いた呟き。


今。何が起きた？



「さとみくんみたいなイケメン相手じゃ心臓持ちません……」



ただ分かるのは一抹の期待を抱いてしまっている俺が居るという事。




「A、俺にキスした？」


「…………」




小さく頷いたキミ。


ぶわーっと顔に全身の熱が集中していくのが分かる。


良かった、キミが顔を隠してて。


きっと俺は今真っ赤だから。


キミとお揃いで。


何だこの甘ったるい超初々しい恋人みたいな雰囲気は。



「くっくっくっ」



俺達初々しくて可愛いなぁっと思ったら笑いが止まらなかった。



楽しい。



こんなに誰かに触れることが満たされることで幸せを感じる事だなんて。



とっくのとうに忘れてた。



「A」



そう呼んでも応えてくれないキミの手のひらをくすぐる。



静かに腕を解いたキミはまだ、照れていて。

.

きっとこれから俺はキミに恋をする。

.

「今日のとこは許したげる。可愛かったから」

.

キミに惹かれていくんだろう。


.



だから、キミも俺に惹かれればい。


・


俺と共有しよう。





━━━━━━━━━━この想いの名前を。


.

▽21→←△19

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す