なにかと推しに避けられるんだが

二十九 ページ32

「......えっ？」


思わず、素っ頓狂な声が出てしまう。

今、なんと言ったのだろうか、彼は。
私の耳には、告白するときに使う言葉が聞こえた気がする。

これが気のせいだったら、とても恥ずかしい。

が、目の前の錆兎君は、顔を真っ赤に染めているので、間違っていないのかも知れない。

なんと言うことだ、槍が降ってきそう。


「好いています、貴女を女性としてみている」

「嫌いって言ってませんでしたっけ......」

「そ、それは...その」


思わず、本音が出てしまう。

だって、彼は私の目の前で今の発言とは程遠い「嫌い」という発言をしたのだ。

それなのに、いきなり反対になるとか...あれだね、嘘告というやつなのか？

とか、現実逃避をしてしまったりしてしまう。


「俺の近くに居る人が、不幸になってしまうと思って...Aさんに怪我をさせたくなかったし、怪我しているのをみて、怖くなったんです。

けど、俺が貴女を避けて、最終選別のときに、遅く帰ってきたとき、気付きました。

貴女を守りたい。俺、強くなります。貴女の隣にいられるくらいに。待ってて下さい、追いつきますから」


その聞いていて恥ずかしくなる告白に、私の顔は真っ赤に染まる。

熱い、熱い...

それは、彼の告白のせいなのだろう。確実に。

なんと言ったらしい良いか分からず、喉からなにも言葉が出てこなかった。

彼の顔から、この空気から、彼が本気で私を好いていると分かったから。どういう言葉を掛ければ良いのか、分からなかった。


「行きましょうか、俺、鍛錬したいので。教えて下さいね」

「ひゃい...」


どうしてこんな色気があるのだろうか。

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