5、転校生 ページ6
カナヲside
その日、朝からクラスが騒がしかった。
「どうしたのかしら、皆。」
私はアオイと同意見だった。
耳を済まして聞いてみると、
「ねぇねぇ、転校生見た?」
とか、
「見た見た!メガネの子だったよ!」
とか、
「髪長かったよね。」
とか、
「大人しそうな雰囲気だった!」
とか言う声が聞こえた。
へぇ、転校生が来るんだ。
「転校生ねぇ。また、問題児かしら。この学校、問題児多いもの。」
そうだね、先生も生徒もほとんどが問題児だもの。
すると、担任の砂川先生が来た。
「皆さん、お早うございます。ほら、席に着いて。転校生を紹介するわ。」
先生のその一言で、クラスが騒がしくなった。
「静かに! じゃあ、入っていいわよ」
入ってきた子は、メガネをかけて胸くらいまである髪を伸ばしきっている。制服のニットはちょっとだけブカブカしている。色が白くてほっそりしている子だ。
「どうぞ、ここに来て。」
先生の隣に並ぶと、彼女がどれだけ小さいかが目に見えてわかる。
「名前を言ってくださいね、まずは黒板に名前を書いてちょうだい。」
彼女はとても小さい字で、『北野星姫』と書いた。
「なんて書いてあるか全然分かんねー!」
とクラスのお調子者が言うと、皆がドっと笑った。
すると、北野さんは塩を振りかけられたナメクジみたいに縮こまった。
「コラ!静かにしなさい。北野さん、もう少し大きくかけるかしら。」
北野さんはちょっと大きく名前を書いた。
「北野星姫です···」
北野さんは小さい声でそう言うと、それきりで黙ってしまった。
「それじゃあ、質問タイムにしましょうか。手を挙げてね!」
皆がズラッと手を挙げた。
「好きな色は何ですか。」
と聞いた子には、
「特にありません」
と答え、
「好きな食べ物は?」
と聞いた子にも、
「特にありません」
と答え、
「前の学校で何が流行ってたの?」
と聞いた子の質問にはピクっと肩を震わせて、ちょっと経った後に
「知りません」
と答えた。
消極的な北野さんは、俯くばかりで何も言わない。クラスの雰囲気がズンと沈んだ。
「趣味は?」
遠慮がちに聞いた子には、
「一人で本を読んでいるとき、です。」
フルフルと全身を震わせ、目を瞑っている。
「そ、そう。北野さんの席は、栗花落さんの隣よ。」
わっ、私の隣?
私、人見知りだからなぁ···上手く話せそうにないよ。
北野さんが隣に座って鞄の中身を机にしまっている途中、私は
「よ、よろしくね。」
と声をかけた。
北野さんは頷いた。
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作者名:練乳いちご | 作成日時:2021年8月21日 15時