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"我妻くん"
2日間だけだったが、沢山俺の名前を呼んでくれた彼女は、俺を見ることすら無くなっていた。
常に近くには、炭治郎がいて
仲良さそうに笑い合っている姿があるだけ。
話している内容、聞こうと思えば聞ける。
同じ空間にいるんだ、耳がよすぎる俺にとって聞こえないはずがない。
だけど、聞くのが怖くて耳を塞ぐ。
逃げるように禰豆子ちゃんのところ、伊之助のところへ行ったりもした。
『なぁ、伊之助、どうすればいいと思う?』
「俺は愛だとか恋だとかわかんねぇ」
『……だよね、そんな感じするもん』
「ああ?なめんじゃねぇぞぶっ殺すぞ!」
でも、この恋に詳しい人なんかいるはずがない。
頼りにしてる炭治郎は、好きな人と仲良いし……なんなら、その子のこと好きっぽいし?
……俺の恋は、ここで終わりなのだろうか。
『ああぁ、伊之助ぇ……』
「近寄んな!殺すぞ!」
『酷いなぁ、伊之助は……』
好きすぎて、どうしたらいいのかわからない。
どうすれば、彼女を傷つけずに喜んでもらえるのだろう。どうすれば、どうしたら、また好きになってくれるのだろうか。
「……まあ」
伊之助は目に掛かる俺の前髪をくしゃりと掴み上げると、ふ、っと右口角を上げた。
「お前の気持ち、素直にそのまま言えばいいんじゃねぇの」
伊之助のその言葉は、きっと、誰よりも力があって俺の背中を思いっきり押してくれた。
素直に、そのまま。
そうだ、俺は。
遠回りしすぎたんだ。
『っ、伊之助、ありがとう!』
「ん?どこ行くんだ?」
『もうチャイム鳴るから教室戻る!』
Aが好きだ。
もう俺のこと好きじゃなくても、炭治郎のことが好きでも、俺はまた、振り向かせてみせるよ。
今度はもう逃げないから。……君がしてくれたみたいに、精一杯の声で、また、君に言うよ。
付き合ってください、と。
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凪 - 面白かったです! (2020年2月1日 22時) (レス) id: b575dccd32 (このIDを非表示/違反報告)
よる - 超苦しい!なんかやっぱりきゅうってする!…炭治郎ぅう!私は好きだゾォォオ!! (2019年12月23日 1時) (レス) id: bbe87bcae1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふわふわべあー。 | 作成日時:2019年12月7日 21時