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『我妻くん、一緒に……』
「あっ、禰豆子ちゃん!!一緒に帰ろう!」
放課後。
精一杯声に出して誘おうとしたものは、簡単に潰される。
彼のうるさい声。……毎回、失敗に終わる。
仲良さそうに並ぶ後ろ姿に、ちくりと胸が痛む。
じんわり歪んだ視界を天井に向け、涙が溢れないように堪えた。
「A」
隣から聞こえた優しい声は、相も変わらず幼なじみで。
無理やり上げた口角で"今日もダメだったや"と涙を誤魔化す。
ねぇ、炭治郎。
私は、どうすればいいのかな。
その言葉は飲み込んで、"帰ろっか"と彼から遅れて教室を出た。
「苦しい」
『え?』
くんくん、っと2回嗅いだのか、炭治郎は私を見て、顔を歪めた。
「そんな、匂いがする」
そうだ、炭治郎は鼻がずば抜けて効くんだった。
だから我慢した気持ち全部、見破られる。
炭治郎だけは敵わない。匂い嗅がれたら、もう一発で。
『うん、ちょっと、苦しいかも』
だからこそ、少しだけ気持ちが楽になる時もある。
こういう時は、特に。
『何で炭治郎がつらい顔してるの』
「いや、だって、」
『言えないこと、気づいてくれるのは嬉しいけど炭治郎は人思いすぎ。1個1個そんなんじゃ、持たないって』
でも炭治郎は、私にはよく分からないけど"苦しい匂い"が私から漂うと、いつも顔を歪めては私より苦しそうにする。
炭治郎なりの優しさ。
わかってるけど、炭治郎がそんなにつらくならなくってもいいんだよ。これは、私と彼のことだし。
いつもそう言うけど、炭治郎は……治らないみたい。
「……ごめん」
『謝らないでって……ふふ、これも何回目?炭治郎は何も悪くないんだから、ね?』
私が、もっと変わらなければいけない。
このままじゃいけない。
わかってるけど、彼に近づく1歩が怖い。
私ばっかり膨らむ"好き"を伝えたら、どうなるのかとか考えただけでも怖くって。
きっと、彼にとってもはや迷惑と化したこの気持ちは、どこに行くわけでもなくさ迷ってるだけ。
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凪 - 面白かったです! (2020年2月1日 22時) (レス) id: b575dccd32 (このIDを非表示/違反報告)
よる - 超苦しい!なんかやっぱりきゅうってする!…炭治郎ぅう!私は好きだゾォォオ!! (2019年12月23日 1時) (レス) id: bbe87bcae1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふわふわべあー。 | 作成日時:2019年12月7日 21時