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暫くして彼女は落ち着いたのだろうか俯いていた顔を上げ、此方に目を向ける。その目はしっかり自分を移しているのを確認して佐野は問う。
「オレの事怖い？」
「さっきのは吃驚しただけ」
「そ、よかった」
佐野がそう言うと革靴の硬い足音が響いた。近くなってくる足音に女は音の方向へと視線を向ける。
足音の正体は三途であった。佐野はこの男に先程連絡していたのだ。
「連れてきました。」
「行こ。家」
佐野は立ち上がって彼女に一言声を掛ける。が、彼女は顔を俯かせて立ち上がろうとしなかった。佐野はそんな彼女の前にしゃがみこんで視線を合わせる。
女は、もう少し、あと少しだけ此処にいたいと思ってしまったのだ。この男と居ると彼と居るのと違って安心できて。
「家嫌？」
「もう少し話したかった」
「オレ、ここに居るから、逃げたくなったら来な」
「ありがと」
優しい顔をして女と視線を合わせる自身の首領に、前の様な怯えた様子の無い黒髪の女。佐野は女の手を取って立ち上がらせる。
三途はその光景を見て唖然としていた。首領のあんな顔を最後に見たのはどれくらい前だったか。自分達にはもう見せないあの顔。それを引き出したあの女。この短期間で何が。
あの女は”マイキー”に何をしてあの表情を引き出したのだ。口調も昔のように少し柔らかくなって。考えても疑問が頭で廻るだけで答えなど出るはずも無かった。薬を呑みたい。三途は訳も分からずに苛ついてピアスを弄り、自身が耽溺している小まいモノを求めた。
「三途。車どこ」
「向かいにあります」
佐野は彼女に向けていた顔を三途に移した。佐野は先程の柔らかな表情は無く、そこに居るのは梵天の首領だった。三途は苛立つ心中を外に表さずに冷静に佐野の問に応える。目の前を通り過ぎた男と女の後ろ姿を鬱陶しがる様な顔をしながら見送るのだった。
「車乗って」
「うん」
佐野は車の扉を開け、彼女を座らせ自分はその隣に座った。運転席に黒服の男。助手席には顔色の悪い４、５０代程の男が乗っている。
「家どこ」
佐野の問いに女は丁寧に答えると黒服の男は「畏まりました」と堅苦しい口調で返答するのだった。
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湊嘩(プロフ) - 初コメ失礼します。作者様の作品はこれが初めてだったのですが、表現力や語彙、文章力が凄まじくて一気読みしてしまいました。私の語彙力が低くて申し訳ないのですが、本当に面白かったです。長文すみません。本当にありがとうございました！ (2021年9月21日 19時) (
レス) @page30 id: 1ab5df6e8d (このIDを非表示/違反報告)
苺ミルク飴(プロフ) - 完結おめでとうございます！文章力とか語彙力が素晴らしすぎて、何回も読んでしまいます！すごく読み応えがあって、とても面白かったです！素敵な作品をありがとうございました！それとお疲れ様です！他の作品の更新等頑張ってください！応援してます！ (2021年8月24日 12時) (レス) id: 976df8db05 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろぽっぷ(プロフ) - とっても面白いです！応援しています。更新頑張って下さい (2021年8月4日 12時) (レス) id: 0077bb053c (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます！更新お待ちしてます！！ (2021年7月24日 23時) (レス) id: 631cb64e08 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：田中 | 作成日時：2021年7月4日 16時
