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家の鍵を開けて直ぐに家の中へ入り、鍵をかける。
靴を脱いで綺麗に揃える。
床を踏むと、ひんやりとしていて、青白い自分の足が白のフローリングに浮いていた。
自身の傷を隠す黒の服を肘まで捲って、彼の好きな香りの石鹸を付け、洗面所で手を洗う。
何時も定位置に置かれている連絡用のスマホで彼に連絡を入れ、夕飯の準備に取りかかる。
一時間位して、もう直ぐ彼が帰ってくる時間なので玄関に行って彼を待つと暫くしてガチャと荒々しく扉が開かれる。
「お帰りなさい」
彼は私のその言葉を無視して先々と足音を大きく立てて歩く。リビングに入って行く彼の後ろ姿を追う。
心臓がバクバク鳴って耳に響いて煩い。それが彼にも響いて聞こえて仕舞いそうでゆっくりと呼吸を整える。
今日は機嫌が悪い日だ。
「飯」
「ぁ、はい」
急いで彼の目の前に先程造った夕飯を置いた。冷蔵庫から冷たいビール瓶を取り出して開けると何時になっても慣れないエステルの香りがツンと鼻を刺した。それをチューリップグラスへ移す。彼はそれを横目に一口夕飯を食べると使った箸を箸置きに置いた。
「作り直せ」
息を吐くように彼が言った言葉に、電子音が頭で鳴って目の前の怒っている彼を放心して見ている事しか出来ない。返す言葉が出てこないのだ。
「え、あ」
「作り直せって言ってるんだ！」
「あ、ご、ごめ･･･なさ」
彼の大きな怒鳴り声ではっとする。恐怖で震える足を必死に動かしてキッチンへ行く。どうして何時も自分は彼を怒らせて。手を必死に動かしてまた夕飯を造る。
「ごめんなさい」
彼の目の前にまた夕飯を出すと、彼はそれを見るだけで箸を取ろうともせずに溜息を深く着いた。
すると、彼は勢いよく立ち上がって椅子を此方に蹴る。それが右足に当たって劈く様な激痛が走った。
声を出せば怒られる。彼の機嫌が悪くなるので右手で口を覆って必死に声を押し殺した。
「ご、ごめ」
ポロポロと涙が溢れてきてしまって謝罪の言葉を繰り返し口にする事しか出来ない。
また殴られる。蹴られる。昨日もされたばかりなのに。
必死に呼吸をしようとすると、すっと体の力が抜けてその場に崩れ落ちた。
歪む視界の中、彼が足を振り上げるのが見えて。
急な衝撃に息が止まって蹴られたお腹に痛みが走って、呼吸が出来ない。
彼は冷たい視線を上から寄越し、リビングから出て行った。
良かった。今日は一度蹴られただけ。私が悪いのだ。愛している彼を怒らせているばかりで。
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湊嘩(プロフ) - 初コメ失礼します。作者様の作品はこれが初めてだったのですが、表現力や語彙、文章力が凄まじくて一気読みしてしまいました。私の語彙力が低くて申し訳ないのですが、本当に面白かったです。長文すみません。本当にありがとうございました！ (2021年9月21日 19時) (
レス) @page30 id: 1ab5df6e8d (このIDを非表示/違反報告)
苺ミルク飴(プロフ) - 完結おめでとうございます！文章力とか語彙力が素晴らしすぎて、何回も読んでしまいます！すごく読み応えがあって、とても面白かったです！素敵な作品をありがとうございました！それとお疲れ様です！他の作品の更新等頑張ってください！応援してます！ (2021年8月24日 12時) (レス) id: 976df8db05 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろぽっぷ(プロフ) - とっても面白いです！応援しています。更新頑張って下さい (2021年8月4日 12時) (レス) id: 0077bb053c (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます！更新お待ちしてます！！ (2021年7月24日 23時) (レス) id: 631cb64e08 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：田中 | 作成日時：2021年7月4日 16時
