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「さっきの大丈夫だったか」
「え？うん」
佐野はやはり危機管理能力が備わってない彼女に少し苛立ちを感じた。だが、自分は黒だ。此処で彼女に危ない、少しは警戒しろと注意しても自分から彼女に関わっている時点で矛盾でしかないのだ。
横を歩く彼女は出会った時のあの酷く怯えていた様子も無いようで、佐野に安心している様であった。
「もう男大丈夫なの」
「男の人に関わったら怒られちゃうから。それが怖かったの。社長さんの奥さんの所に行くって言ったら怒られなかったから大丈夫」
会社の社長に媚びを売る。世間的地位を気にするタイプ。 何時も「怒られる」と言う彼女。自分が全て悪いと思っているんだろう。人は幾度も殺めてきた。が、少なくとも佐野はこの女をあの男から救いたいと思ってしまったのだ。自分の元へ来て一緒に死んでしまえば良いと思った。
「逃げたい？」
「逃げたらあの人一人になっちゃう」
彼女はあの男の事を好きと言っていたが、唯の洗脳だ。彼女と彼氏の間を繋げているのは男の方からの異様な執着だけである。
佐野は女をソファに座らせ、自分は冷たいコンクリートに膝をつけ、彼女の顔を除く。
「なぁ、家居んの辛くねぇの」
「･･･分かんない」
「オマエさ。彼氏に怒られた時全部自分が悪いとか思ってねぇ？」
「え、うん」
女は何当たり前のことを言っているんだと思った。彼を怒らせた、機嫌を損ねてしまった自分が悪いと女は思っているのだ。
「偉いよ。オマエ。」
「え？」
「頑張りすぎんな」
四.五年逆らったら暴力を振るわれる生活を続けて居れば彼氏に尽くせるのは当たり前ではある。が、佐野は今の彼女を肯定するのが大事だと思ったのだ。目の前の彼女はやはり賛され慣れていないのか目を丸くして此方を向いて固まってしまった。
「え、や」
「擦ったら赤くなる」
女の両目からポロポロと涙が溢れ、白い肌に翳りを作る睫毛を濡らす。戸惑っている様に女は自身の目を荒々しく拭った。痛くないのに、怖くないのに涙が出てくる事に女は戸惑っていたのだ。
佐野は彼女の顔にかかる手を退け、頬に伝った涙の跡を自身の手で拭った。佐野の手は冷たかった様で女は一瞬驚くが、優しい手つきで心地よく、女はされるがままで居た。
「なんで、泣いて」
「怖くなったら逃げろ。ココで待ってっから」
彼は痛も優しく笑って言う。その笑顔が恐ろしい程綺麗で女は目元を拭われながら歪んでいる視界で彼のその顔を見詰める事しか出来なかった。
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湊嘩(プロフ) - 初コメ失礼します。作者様の作品はこれが初めてだったのですが、表現力や語彙、文章力が凄まじくて一気読みしてしまいました。私の語彙力が低くて申し訳ないのですが、本当に面白かったです。長文すみません。本当にありがとうございました！ (2021年9月21日 19時) (
レス) @page30 id: 1ab5df6e8d (このIDを非表示/違反報告)
苺ミルク飴(プロフ) - 完結おめでとうございます！文章力とか語彙力が素晴らしすぎて、何回も読んでしまいます！すごく読み応えがあって、とても面白かったです！素敵な作品をありがとうございました！それとお疲れ様です！他の作品の更新等頑張ってください！応援してます！ (2021年8月24日 12時) (レス) id: 976df8db05 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろぽっぷ(プロフ) - とっても面白いです！応援しています。更新頑張って下さい (2021年8月4日 12時) (レス) id: 0077bb053c (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます！更新お待ちしてます！！ (2021年7月24日 23時) (レス) id: 631cb64e08 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：田中 | 作成日時：2021年7月4日 16時
