Sing a song. 【歌い手短編集】

カラオケ *伊東歌詞太郎* (リク) ページ35

カラオケ行きましょう、って誘ったのは私だった。









ここ最近、お互いの仕事────特に歌詞さんの仕事が忙しくて、ろくに会う時間も取れなかったから。









久しぶりに休日が重なったし、どこか行こうって思って今に至る。









歌詞)珍しいね、Aがカラオケ行きたいって言うなんて。遊園地とか映画館とかかなぁって思ってたんだけど









カラオケボックスに入ると、自然な流れで私に飲み物を渡しながら歌詞さんが言った。









こういう小さな気遣いが出来るところ、ほんとに紳士だなって思っていちいちときめいてしまう。









A)…だって歌詞さん、最近どんどんファン増えてくじゃないですか。歌詞さんのファン第1号は私なのに…だから今日はとことん歌ってもらいますっ！









言いながらなんだか恥ずかしくなって、歌詞さんに半ば強引にマイクを渡す。









歌詞)……なぁんだ、もしかしてヤキモチ？









少し嬉しそうに笑って私の顔を覗き込んでくる歌詞さん。









A)〜〜っ……人気商売なんだからファンが増えるのはいいことだし、馬鹿なこと考えてるってわかってるんですけど、









それでも、可愛い女の子達にキャーキャー言われてるとこなんて、あんまり見たくないんです。









なんて言ったら困らせちゃうから、懸命に言葉を飲み込んで。









A)…っそんなことより、もう曲入れますからね！









すっかり赤くなってしまった指先で、曲の検索をかけた。

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