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『俺のところに戻ってきて』
その言葉に、動揺して、胸がキュッと痛くなる。
今まで聞きたかった言葉。
リノに言ってほしかった言葉。
リノは彼女に嘘をつかれて、脅されて、
無理やり付き合ってたんだ。
そんなことも知らずに、リノが苦しんでいたのに。
「…………」
『Aがいない毎日は本当につまらなかった』
私もだよ。
リノがいなくなった日から、ずっとそう思ってたのに。
『ソアとのこと許してくれるなら、もう1回俺とやり直して』
こんなにも、聞きたかった言葉なのに、
なんですぐに“うん”って言えないんだろう。
ヒョンジンの顔が頭から離れない。
リノとよりを戻せば、どれだけヒョンジンが悲しむ?
あんなに支えてくれたハンにも、合わせる顔がない。
『……もう、遅かった?』
そんな、悲しそうな顔で見ないで。
リノの顔を見て揺らいでしまう自分に、
どうしていいか分からなくなる。
「……遅いよ、なんで早く言わないの…」
『ごめん。どこかでAなら待ってくれると思ってた自分がいて、』
「…………」
『別れてからもずっと、Aのことが好きだった』
そう私の手を取るリノの手には、お揃いの指輪が付いているのが見える。
『これ、返す』
と手のひらに置かれた、私がリノに返したはずの指輪を
握りしめるように手を握らせるリノは、席を立つ。
『考えて。返事は急がないから』
全然飲んでいないコーヒーをそのままに、
私の頬を撫でるリノはカフェから出ていく。
指を広げ返ってきた指輪をどうしようかと見つめては、ため息をつく。
「…………」
どうしよう。
私は、どうしたいんだろう?
リノがいない日々は、生きてることも面倒なくらい、つまらなかった。
でもそれを支えてくれたのはヒョンジンで、
前に進もうと、リノのことを忘れようと思わせてくれた。
〜♪
鞄から着信音が聞こえて、スマホを取ると
ヒョンジンからの着信がくる。
『起きてた?』
「うん…起きてた」
『美味しいパスタ屋、見つけたから行こう』
いつもと変わらないヒョンジンは、私をご飯に誘う。
「明日は、予定があって…」
『そっか、残念。ゆっくり休んで』
「ごめんね」
『うん〜また誘う』
とヒョンジンとの電話を終わり、指輪を握りしめ席を立つ。
少し考えよう。
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belle(プロフ) - ヒョンジン〜もう素敵な世界観すぎて感動しました!泣Kii123さんの作品どれも大好きです! (12月20日 23時) (レス) @page50 id: fb48995cf6 (このIDを非表示/違反報告)
Saa(プロフ) - ヒョンジンが報われてよかったです! (11月26日 8時) (レス) @page50 id: 77cba17a92 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆしき(プロフ) - 今作も最高ですし泣きました。毎回とても素晴らしい作品を執筆して頂きありがとうございます。感謝しかないんですけれども.....次回作も楽しみにしております。お体には気をつけてください.... (11月23日 21時) (レス) @page50 id: 80317f73c9 (このIDを非表示/違反報告)
雨 - 面白すぎました!展開も最高です!次回作もとてもたのしみです!! (11月23日 20時) (レス) @page50 id: 6dabbf1a66 (このIDを非表示/違反報告)
雨 - 最高に面白いです!! (11月22日 1時) (レス) id: 6dabbf1a66 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Kii123 | 作成日時:2023年11月10日 23時