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「じゃあコーヒーを奢って下さい」
と目の前の女性は俺がこぼしてしまったコーヒーが染み付いたグレーのパーカーを着て微笑んでいた。
『分かりました』
とつい笑顔になって答えると、
その女性は何も言わずにテクテクと歩き始める。
少し後ろをついて歩いていると、
“私が行きたいカフェ、少し歩くんですけど”と心配そうに振り返る。
『大丈夫ですよ』
「ありがとうございます」
綺麗に染められたブラウンの髪に、
パーカーの下は黒いレギンスを履いていて、
化粧もしてるかしてないか分からないほど薄い。
なのに俺は、今目の前を歩いてる女性が魅力的に感じている。
『……あの』
「はい?」
『近所なんですか?』
そう勇気をだして声をかけるも、
女性は苦笑いして“はい近所です”と渋々答えては、すぐ前を向く。
こんなに綺麗で可愛いから、彼氏いるか。
余計なことすんな俺。
「ここです」
徒歩5分ほど歩いたところで、
女性は振り返りお洒落なカフェを指さしていた。
“買ってきますね”と1人でカフェに入ろうとすると、
その女性はぺこりと頭を下げ、お店の外にあるベンチに座る。
綺麗でオシャレな店内に
こんな所があったのかと関心しつつ、アメリカーノを頼み出来上がるのを待った。
レシートを手に持ち、
無意識に外のベンチで待っている女性を見ようと、外の方をチラッと覗くと、さっきまで座っていた女性の姿は見当たらない。
あれ?
あのベンチに座ったの見たのに…
俺の目線は女性を探すのにキョロキョロと動く。
すぐに見つかったと思えば、
その女性はある男性と立ち話をしているのが目に入った。
知り合いかな?
“アメリカーノ2つでお待ちのお客様〜”
そう店員さんの声が耳に入り、視線を戻す。
コーヒーを受け取り外に出ようとすると、
まだ話しているのが見えて躊躇う。
終わるの待った方がいいかな。
そう思い店内の椅子に腰かけた。
彼氏かな?男前だし。
呑気にそんなことを考えながら先にコーヒーを口に運ぶ。
携帯を取りだし少しいじって再び目線を外にやると、
いつの間にか男性はいなくなって、女性1人になっていた。
あれ、いつの間に…
椅子から立ち上がり外に出ると、
男性は少し先を歩いていて、女性はその後ろ姿を寂しげな目で見つめていた。
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belle(プロフ) - ヒョンジン〜もう素敵な世界観すぎて感動しました!泣Kii123さんの作品どれも大好きです! (12月20日 23時) (レス) @page50 id: fb48995cf6 (このIDを非表示/違反報告)
Saa(プロフ) - ヒョンジンが報われてよかったです! (11月26日 8時) (レス) @page50 id: 77cba17a92 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆしき(プロフ) - 今作も最高ですし泣きました。毎回とても素晴らしい作品を執筆して頂きありがとうございます。感謝しかないんですけれども.....次回作も楽しみにしております。お体には気をつけてください.... (11月23日 21時) (レス) @page50 id: 80317f73c9 (このIDを非表示/違反報告)
雨 - 面白すぎました!展開も最高です!次回作もとてもたのしみです!! (11月23日 20時) (レス) @page50 id: 6dabbf1a66 (このIDを非表示/違反報告)
雨 - 最高に面白いです!! (11月22日 1時) (レス) id: 6dabbf1a66 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Kii123 | 作成日時:2023年11月10日 23時