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32 (lk) ページ32

リノ side


ソアを送ったあと、家に帰るとマンションの外に座り込んでいる人影をみつける。



女……?

誰だ、こんな時間に…


と下を向いていた人影は、俺の足音で頭をあげる。


『ぇ、A…、?』


「リノ」


『寒いのに、何やって…』


手を伸ばそうとする前に、Aはスっと立ち上がると、
持っていた紙袋を俺に渡す。


「返すのが、遅くなってごめん」


紙袋を覗くと、Aの部屋に置いていた俺の私物で
その中には指輪の箱が入っているのが見えた。



「…私は、リノを忘れるから」



『………』


「大好きだった。」


声を震わせているAは、下を向いていた。



恐れていたことが起きた。


普通、1年も待ってくれるはずがない。

Aがいなくなる。
それを実感し始め、心拍数が上がり始める。



『A、あと半年だから』


「半年?何?待ったら戻ってきてくれるの?」



『うん戻る』


「…じゃあ今戻ってきてよ」


『………』



戻りたい。俺だって。


今すぐAを抱きしめたい。



ソアが本当のこと話したら、Aはどう思う?

もう俺の事なんか、相手にしないだろうな。



「リノが半年後、戻ってくる保証なんかない」


『………』


「お願いだから、私にこれ以上思わせぶりするのはやめて」


と、俺に背を向けるAはゆっくり歩み始める。


すかさずAの手を取り、
引っ張ると勢いで俺の方を振り向くAを抱きしめる。


「っ、」



久しぶりに、Aを抱きしめたな…

ずっと、こうしたかった。


Aの体温、変わらない香水の匂いに抱きしめる強さが強くなる。


「ずるいね、リノは」


『…え?』


小さな声で呟くAは、
俺を抱きしめ返しているわけでもなく、
俺の着ている服をギュッと握っていた。



「…そうやって、私を繋ぎ止めておくんだね」



そうかもな。

繋ぎ止めておかないと、いなくなっちゃうから。



「………」


Aの手が、俺の服から離れ一瞬腰に気配を感じるも、
俺の背中にAの手が回ることはなかった。


『俺はあと半年、Aのこと繋ぎ止めるつもりだから』


「もう私は前に進みたい」


『…俺のことは置いてくんだ』


「っ置いていったのは、リノでしょ」


俺の胸に顔をうずめているAは、泣いているのか声が震えていて、顔を上げることなく動かない。


本当に俺は、ずるい。


Aがいなくなるのも嫌だけど、
今すぐよりを戻すこともできない臆病者。

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belle(プロフ) - ヒョンジン〜もう素敵な世界観すぎて感動しました!泣Kii123さんの作品どれも大好きです! (12月20日 23時) (レス) @page50 id: fb48995cf6 (このIDを非表示/違反報告)
Saa(プロフ) - ヒョンジンが報われてよかったです! (11月26日 8時) (レス) @page50 id: 77cba17a92 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆしき(プロフ) - 今作も最高ですし泣きました。毎回とても素晴らしい作品を執筆して頂きありがとうございます。感謝しかないんですけれども.....次回作も楽しみにしております。お体には気をつけてください.... (11月23日 21時) (レス) @page50 id: 80317f73c9 (このIDを非表示/違反報告)
- 面白すぎました!展開も最高です!次回作もとてもたのしみです!! (11月23日 20時) (レス) @page50 id: 6dabbf1a66 (このIDを非表示/違反報告)
- 最高に面白いです!! (11月22日 1時) (レス) id: 6dabbf1a66 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Kii123 | 作成日時:2023年11月10日 23時

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