検索窓
今日:19 hit、昨日:75 hit、合計:97,058 hit

29 ページ29

.



『A』

ベンチに座っておにぎりを食べていると、
後ろから聞こえる、振り向かなくても分かるリノの声にドキッとする。


「……」


ゆっくり振り向くと、案の定リノが立っていて
“隣いい?”と言いながら返事をしてない私の隣に座る。


「彼女が怒るんじゃない?」


『さぁ?』


「………もう行くね」


何考えているか分からないリノに、
少しイラつきを覚えベンチから立ち上がる。


『怒ってる?』


「え、?」


『急に別れを告げたこと』


「……」


怒ってない。

怒りなんてなかった。



『本当に自分勝手だった』


「もういいよ、リノは今幸せなんでしょ」


『どうだろ?』



なんで、そんなに悲しそうに笑うんだろう。


ベンチから立ち上がった私を
無理に引き止めることもないリノは、私のことをベンチから見上げるだけで何も言わない。


「……彼女といつから付き合ってるの?」


『Aと別れた次の日』


「……はは、そう」


ひどいなぁ。

笑うしかない。



『Aは、あの男といつからそういう仲?』


“そういう仲”?

何を勘違いしてるのか。


「…リノと別れてからだよ」




『…ふ〜ん』



「ヒョンジンとは付き合ってるわけではないよ」


『うん。知ってる』


「ぇ?」


『Aは俺の事忘れないだろうなって思ってるから』


うん。そうかもね。

だから忘れるために、頑張ってたのに。



「ずるいね」


『え?』



「そうやって、私の気持ちを引き止めてどうするの?」


『………』



「リノには綺麗な彼女がいて、好きな人が出来たって私を振ったくせに…本当は私に気持ちなんか無いくせに。」


『………』


図星なのか、何も答えなくなったリノに、
再びベンチに座ることなんかできなくなる。


本当は、まだ一緒にいたい。


隣にリノがいることが、嬉しいのに。



「…お幸せに」



そんな思ってもない言葉を口にすれば、
自然と視界がぼやけていく。


もちろん追ってくることなんかないのに、振り返りそうになる気持ちをグッと抑え、リノに背を向け歩き進めた。

30→←28



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (163 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
544人がお気に入り
設定タグ:kpop , StrayKids , スキズ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

belle(プロフ) - ヒョンジン〜もう素敵な世界観すぎて感動しました!泣Kii123さんの作品どれも大好きです! (12月20日 23時) (レス) @page50 id: fb48995cf6 (このIDを非表示/違反報告)
Saa(プロフ) - ヒョンジンが報われてよかったです! (11月26日 8時) (レス) @page50 id: 77cba17a92 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆしき(プロフ) - 今作も最高ですし泣きました。毎回とても素晴らしい作品を執筆して頂きありがとうございます。感謝しかないんですけれども.....次回作も楽しみにしております。お体には気をつけてください.... (11月23日 21時) (レス) @page50 id: 80317f73c9 (このIDを非表示/違反報告)
- 面白すぎました!展開も最高です!次回作もとてもたのしみです!! (11月23日 20時) (レス) @page50 id: 6dabbf1a66 (このIDを非表示/違反報告)
- 最高に面白いです!! (11月22日 1時) (レス) id: 6dabbf1a66 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:Kii123 | 作成日時:2023年11月10日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。