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結局あんまり眠れないまま、
いつも乗る時間のバスに乗り込むと
リノがひとり席に座っているのが目に入る。


「………」


別れてから、この時間のバスであうことがなかったリノがいて少し驚きつつもすぐに目を逸らす。

満席のバスに座るところはなく手すりを掴むと、
リノが席を立ち、私に席を座るように指をさす。



ううんと、断るように首を振ると
近くで立っていた女性がリノが座っていた席に座る。


『何で断るんだよ』


と私の隣に立つリノは、
少し不満そうな顔をして私の顔を覗く。


「…なんでこの時間に?」


『別に。前乗ってた時間に戻しただけ』


「…そう」


『Aはずっとこの時間に乗ってた?』


「知ってるくせに」


本当、私をからかうのは変わらない。


リノは“知らなかった”となぜか嬉しそうに笑うと同時に、
大きくバスが揺れ、耐えきれずに転けそうになる。


「っ、」


転けることなく、体は立ったままで、
いつの間にかリノの手が私の腰に回り、
支えられていることに気づく。


『大丈夫?』



「あ、ありがと」


リノからすぐに体を離し、力強く手すりに捕まる。


『俺につかまっててもいいよ』


「ううん、大丈夫」



リノがこんなに側にいたのは、いつぶりだろう。

付き合っていた頃のように、
普通に会話してこんなに近くにいて…


大学に着くまでの、今の時間が過ぎていくのが
あまりにも名残惜しかった。


『またな』

大学前のバス停に着くとリノは、
また私の頬を撫で、先に降りていく。



バス停で降りていく同じ大学生であろう人達が
降りるのを待ち、1番最後にバスを降りた。





“今日体調悪くて休む。飯一緒行けなくてゴメン”

教室まで歩いていると、ハンからメッセージが届く。


あんなに昨日元気だったのに。

大丈夫かな。



“お大事に”と返事をし、スマホを閉じた。




──────


ご飯、どこで食べようかな。


ハンがいないと一緒に食べる友達もいないなんて。


「…はぁ、」



小さなため息をつきながら、外をとぼとぼ歩き
足は自然とリノと一緒に食べていたベンチへと向かう。



結局、私は何も進んでいないんだな。


彼女のいるリノに振り回され続けていて、
想いを寄せてくれているヒョンジンと、向き合おうともしない。


最低だなぁ。私。

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belle(プロフ) - ヒョンジン〜もう素敵な世界観すぎて感動しました!泣Kii123さんの作品どれも大好きです! (12月20日 23時) (レス) @page50 id: fb48995cf6 (このIDを非表示/違反報告)
Saa(プロフ) - ヒョンジンが報われてよかったです! (11月26日 8時) (レス) @page50 id: 77cba17a92 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆしき(プロフ) - 今作も最高ですし泣きました。毎回とても素晴らしい作品を執筆して頂きありがとうございます。感謝しかないんですけれども.....次回作も楽しみにしております。お体には気をつけてください.... (11月23日 21時) (レス) @page50 id: 80317f73c9 (このIDを非表示/違反報告)
- 面白すぎました!展開も最高です!次回作もとてもたのしみです!! (11月23日 20時) (レス) @page50 id: 6dabbf1a66 (このIDを非表示/違反報告)
- 最高に面白いです!! (11月22日 1時) (レス) id: 6dabbf1a66 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Kii123 | 作成日時:2023年11月10日 23時

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