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リノがマンションの前で立って待っている姿が目に入り、
思わずヒョンジンとの手を離す。
“また明日連絡する”なんて送ってくれたのにお礼も言わず、
ヒョンジンが繋いでくれていた手を離し、リノの元へと歩く。
「リノ、」
スマホを触っているリノは、私の声に反応し顔を上げる。
『帰ったか』
「…待ってたの?」
『うん』
「……ねぇリノが言ってた、1年って何?」
どうしても気になっていた。
1年待てば、なに?
『あの男のこと好き?』
私の質問には答えてくれないリノは、
ヒョンジンの後ろ姿を見ながら私に問う。
「どうしてそんなこと聞くの?」
『………』
「なんで、家の前で待つの?」
好きな人がいるなら、彼女がいるなら、
こんなことするべきじゃない。
ただの思わせぶりだ。
「私が、まだリノのこと忘れられないって思ってる?」
『………』
「思わせぶりは、しないで」
『忘れるなよ』
「…え?」
『俺の事、忘れるな』
…なんでそんなこと言うの?
「彼女、いるくせに」
『……』
「欲張り」
『……』
「私のこと嫌いなくせに、」
『………』
「なんで、何も言わないの…」
『……ごめん』
なにが、ごめんなの?
『俺が、全部悪い』
「…どういうこと?」
『会いたかった』
「ぇ、?」
『さっきの男と一緒にいるのも、見たくない』
リノが発する言葉に、驚き言葉を失う。
『Aのことが、俺は1番大切だから』
「………じゃあなんで、」
別れたの?私たち。
『ソアのことは、気にすんな』
ソア、ね。
こんな時でも、リノが他の女性の名を呼ぶだけで心が痛む。
本当、私は前に進めていない。
「……別れた私のことなんかより、彼女のこと大事にして」
『………』
「リノが、今何考えているか分からないけど…振り回すのは、やめて」
『指輪捨てた?』
「………」
…私の話、聞いてた?
『外せとは言ったけど、捨てるなよ』
「………」
『またな』
付き合っていた頃、いつもしてくれていた私の頬を撫でる癖。
自然と頬に手をやるリノは、頬を優しく撫でて帰って行く。
本当に、何を考えているの?
彼女が、好きな人がいるくせに。
“忘れるな”
“会いたかった”
“Aのことが1番大切だから”
そんな言葉、信じれるわけない。
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belle(プロフ) - ヒョンジン〜もう素敵な世界観すぎて感動しました!泣Kii123さんの作品どれも大好きです! (12月20日 23時) (レス) @page50 id: fb48995cf6 (このIDを非表示/違反報告)
Saa(プロフ) - ヒョンジンが報われてよかったです! (11月26日 8時) (レス) @page50 id: 77cba17a92 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆしき(プロフ) - 今作も最高ですし泣きました。毎回とても素晴らしい作品を執筆して頂きありがとうございます。感謝しかないんですけれども.....次回作も楽しみにしております。お体には気をつけてください.... (11月23日 21時) (レス) @page50 id: 80317f73c9 (このIDを非表示/違反報告)
雨 - 面白すぎました!展開も最高です!次回作もとてもたのしみです!! (11月23日 20時) (レス) @page50 id: 6dabbf1a66 (このIDを非表示/違反報告)
雨 - 最高に面白いです!! (11月22日 1時) (レス) id: 6dabbf1a66 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Kii123 | 作成日時:2023年11月10日 23時