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『A〜』
俺に背を向けて携帯を触っているAの服をめくり、
腰にあるタトゥーをなぞりながら名前を呼ぶ。
Aは“ん？”とタトゥーを触る俺の手を上から抑えるように掴むと、携帯を置き俺の方を見る。
『俺の家の近くに引っ越して』
Aと付き合えたものの
引っ越してしまったAの家は本当に遠い。
「引っ越したばかりなのに？」
『うん分かってる』
「ここもいいとこだよ」
それも、分かってるけど。
アイエンとかいう奴も近くにいるし、
なんせ週末だけだと足りない。
『俺は毎日でも一緒にいたいのに』
「あ、来週から長期休暇だよ」
『え？なにそれ？聞いてない！』
長期休暇？
そんなの早く言ってくれたら旅行だって計画したのに。
「長期って言っても1週間だけど」
『聞いてない。なんでそんな大事なこと言わないの』
「え？ごめん…でも1週間ヒョンジンの家に行こうと思ってた」
『うん来て絶対』
──────
「お邪魔します」
今日から1週間、Aが家にいる。
そんな幸せなことがあっていいのだろうか。
長期休暇に入る前日から家に来てくれたAは、
少し大きなカバンを持ち部屋に入る。
『今日から1週間も一緒にいれんの？最高じゃん』
「初めてだねこんな長い時間一緒にいるの」
とAはカバンを置くと、
一直線に俺のアトリエ部屋へ入っていく。
『A〜来て早々、俺のこと無視？』
「ヒョンジンが描く絵が好きなの」
そう返答され、思わず嬉しい気持ちが勝ってしまう。
まあいっか。
1週間もいるんだから。
「最近はなんか描いたの？」
『うん、コレ』
と薔薇の絵を見せると、
Aの目は輝き口元が緩んで“すごい…”と小さな声で呟く。
『あげるよ』
「え？いいの？」
『もちろん』
「嬉しい…ありがとう」
そう嬉しそうな顔で俺が描いた絵を見てるAが、
本当に愛おしくてたまらない。
『ねぇ、ここには俺がいない時好きなだけ見たらいいから』
とAの手を取りリビングへと引っ張る。
薔薇の絵を大事そうに手帳に挟むAを横目に、
コーヒーをいれる。
『Aがいる間は残業せず帰ってくるから』
「ハハ、無理しないで」
“何時になっても、私は家にいるんだから”
と微笑むAに同棲しているみたいで口元が緩む。
『同棲してるみたい』
「うん。仮だけどね」
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作者名：Kii123 | 作成日時：2023年9月5日 22時
