・ ページ14
『帰る』
「まっ、て」
そう俺の手をつかむAは、
俺が帰らないように結構な力で引っ張ってくる。
「帰らないで」
『……話すことない』
「うん、だよね…でも待って…」
『なに？』
言い訳も聞きたくない。
「何を言っても許されないって分かってる。でも、私はイエニのことが好きで…」
『ちゃんと、拒否した？』
「…それは、」
と濁すAに、またため息をついてしまう。
受け入れたのか…
ヒョンとAがキスしているのを想像してしまい、
怒りがこみ上げてくる。
『俺じゃ、ダメだった？』
「そうじゃなくて…」
『Aはヒョンの浮気散々許してたけど、俺は許さないから』
「…え…、」
『一緒にすんなよ』
そう怒りのあまり手を振り払うと、
目を見開くAの目から溜まっていた涙が流れる。
行き場を失ったAの手は、ゆっくり下ろされ
小さな声で“ごめん”とつぶやく声が聞こえた。
言いすぎたと頭の片隅で思いながらも、
怒りが収まることはなく、Aの家を出る。
渡り廊下を歩き、エレベーターのボタンを押す。
無意識にAの家の方を振り向く俺は、Aに言った言葉を後悔しているのかもしれない。
今、玄関で泣いているだろう。
そう心が痛む反面、
ヒョンの勝ち誇ったかのような、笑みを浮かべた顔が頭から離れなかった。
ボーっとしていると
エレベーターの到着音が聞こえ、ドアが開く。
エレベーターに乗り込むと1階へ行くボタンを押した。
──────
〜♪
アラームで目を覚ますと、手探りで携帯を探す。
アラームを切りもう一度目を閉じようとするが、
Aから着信とメッセージが届いていて目が開く。
“イエニが許してくれるまで、謝る”
“本当にごめんなさい”
そう2行のメッセージを確認すると、自然とため息がでた。
『はぁ、』
謝られても…な。
Aに返事することなく体を起こすと、ベットから出る。
リビングのソファに座り、一旦頭を整理する。
とはいっても、Aとヒョンがキスしたのは事実で…
もう何も考えたくない…な。
はぁ、今日は元々Aとデートの予定だったのに。
事前に買った映画のチケットは無駄になりそうだな。
待ち合わせ場所にAがくるはずもない。
ソファから立ち水を飲むと、寝室に戻り目を閉じた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 166人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Kii123 | 作成日時：2023年9月5日 22時
