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『イエナ、久しぶり』
道端でバッタリ会ったヒョンジニヒョンの隣には、綺麗な女性が立っていた。
『久しぶりです』
と頭を下げると、
ヒョンは隣にいた女性に先に行っててと声をかける。
『Aとは順調？』
そう女性が先に歩いて行くのを見つめながらヒョンは、俺に小声で問う。
『はい。順調です。』
『そうそれは良かった』
と笑うヒョンは相変わらずカッコイイ。
いつも余裕そうに笑って、何考えているか読めない。
『幸せにしてやれよ』
『…はい』
『あ、Aに聞いた？』
『？』
『前Aの家にお邪魔したんだよ』
『え、？』
『私物取りに』
と笑みを浮かべるヒョンに、顔が引き攣る。
『…いつですか？』
『ふーん。聞いてないんだ？』
そう何故か嬉しそうに笑うヒョンに、
怒りと嫉妬で自然と手に力が入る。
『あの時もう一押ししてれば、Aは俺のところに戻ってたかな』
『……何かしたんですか』
『さぁ』
ヒョンが私物を取りに行っただけ、とは思えない。
『キスしただけだよ』
と口角をあげ笑うヒョンに、言葉が出なかった。
──────
『A』
ヒョンと会ったあと、家に帰るつもりが気づけばAの家に来ていた。
呑気に笑顔でドアを開けるAは、
“怖い顔してどうしたの？”と俺を招き入れる。
『ヒョンジニヒョンと、会った？』
「…え？」
部屋に入ることなく玄関でそう言うと、Aは歩みをやめ固まる。
ああ、これ以上返事を聞くまでもない。
小さなため息が口から漏れて、
振り向いたAをつい、じっと睨んでしまう。
「っ…イエナ」
『なんで言ってくれなかったの？』
「ごめん…」
気まずい顔をして下を向くAに、
“会ったのはいつ？”と聞けば顔を上げて小さな声で、3ヶ月前ぐらいと口を開く。
『なんで会った？』
「私物、取りに来て…」
『それだけ？』
「え…？」
『私物渡して終わり？』
「え…、うん」
隠すつもりか。
そりゃ、そうか。
キスしたなんて正直に言えるわけがない。
『今日ヒョンに会ったよ』
「え…？」
『…聞いたよ。キスしたことも』
そう言うとAの表情は青ざめ、目に涙が溜まっていく。
『やっぱ本当だったんだ』
「……ごめん、本当…ごめん」
やっぱり、ヒョンのこと引きずってたんだ。
キスしたなんてヒョンの嘘だと、どこかで思ってた。
そう、信じたかった。
「っ、イエナ…ごめん」
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作者名：Kii123 | 作成日時：2023年9月5日 22時
