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まだそんなに時間が経っていないというのに、またあの賑やかな場所に行こうと誘ってきた

聞けばいい店がある、きっと気に入るものがある、

そんな事ばかり仰っる


あぁ、貴方様は可哀想な人ね

気の毒な鬼ね


だって永久の命を持って尚何も分からないのですもの




「A」




ベンチから立ち、繁華街とは反対方向に足を進める


そうね、私は鬼ではないから
貴方様の思うように動かないもの

だから私の行動を止めるには
貴方様から来るしかないわ



「何処へ行く」

『……』



月明かりに照らされて向かった先は椿が咲いている木

その1輪を愛でていると無惨様は隣に立った



「花が好きなのか」

『…』

「だが花束は受け取ってくれなかった」



ほんと、可哀想な人

貴方様は夜の営みと物を贈ること以外の
愛し方を知らないんだもの

忘れてしまったの?


夢の中の彼は頬に手を添え撫でたり、

おでこをくっつけたり、

縁側で隣に座ったり、

一緒に食事をしたり、

庭を少し歩いたり、

見つめ合ったり、

名前を 呼びあったりしてくださったのに…

悲しいわ、かなしい


愛でた一輪を折り無惨様の胸ぽけっとに
そっと花を指す



「白いツバキか」

『花言葉は完全なる美しさ。
完璧な貴方様にピッタリなものでしょう?』

「素敵なプレゼントだ、ありがとう」



『でも椿の花が散るときは
‘落ちる’と表現するんですって』

『首が落ちる様のようだから』



どんなに完全でも完璧でも死を迎えます

始まりがあるなら終わりが着いてくるのが世の理

鬼として生まれ変わっても それは変わりません



「お前は、Aは私に死を望んでいるのか?」



その言葉に笑って返した



『はい。願わずにはいられません』





その晩は交合わず、抱き締められたまま眠った

それがまた擽ったかった。

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こよみ(プロフ) - コノハさん» まさか怖いという感想を貰うとは思いませんでした。ですのでとても嬉しく思います。今回は残酷めで書きたかったので その雰囲気が伝えられたようで、ここまで書いてよかったと思いました。ありがとうございます。この作品が印象に残ってくれたのなら幸いです。 (2020年9月1日 23時) (レス) id: 1c06e5faff (このIDを非表示/違反報告)
コノハ - 怖いです。でも、衝撃的なのは読む人に印象に残りやすくてよかったです。 (2020年9月1日 21時) (レス) id: 231375fc20 (このIDを非表示/違反報告)
こよみ(プロフ) - コノハさん» ありがとうございます!これからも続いていくので今後とも読んでくだされば嬉しいです (2020年8月16日 1時) (レス) id: 1c06e5faff (このIDを非表示/違反報告)
コノハ - 所々に嬉しさがあって面白かったです (2020年7月4日 21時) (レス) id: 231375fc20 (このIDを非表示/違反報告)
こよみ(プロフ) - みーこさん» 面白いと思って頂けて嬉しいです!個人的にはこれでいいのかな?なんて不安もありましたのでこのコメントを見てとても救われました。今回は無惨様の残酷さを活かした小説にしたかったので伝わって良かったです。いいですよね!大好きです!コメントありがとうございます (2020年6月2日 11時) (レス) id: 1c06e5faff (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こよみ | 作成日時:2020年4月25日 21時

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