たとえばなし【鬼舞辻無惨】

after Story (NEW) ページ9

家に着く頃にはもう真っ暗で足もクタクタ

明日も休みでよかった


お風呂に入って、無惨さんが入浴中に
スキンケアと髪を乾かし終える

先に寝てていいと言われたけれど
なんだか待っていたかった



｢まだ居たのか｣

『はい。髪の毛乾かします？』

｢あぁ、頼む｣



私がソファーに座り、
その下に無惨さんが座る

同じシャンプーの匂いが鼻をくすぐった


この人は大莫迦者で、他人への優しさなんか
知らなくて、思いやりの欠片もない人だけど
私に関するとそれはそれは異常なほど優しくなる

この人は私との子を愛してくれるだろうか


電源を切り終えるといつも通りありがとうと
額に唇を落とされる

あの、とドライヤーを戻しに行く無惨さんの袖を
引っ張ってみたが 言葉が上手く出てこない


何かを察したのか隣に座り
顔を無理やり向けさせられた



｢どうした？｣

『えっと…その、無惨さんは子供はほしいですか？』

｢……｣



何も言わないから目を逸らす

要らないって言われたらどうしよう…

お前との子なんか必要ないって思われてるのかな

それはそれで、ショックかもしない


マイナス思考がグルグルと頭の中を駆け回る



｢いいのか？｣

『ぁ、いや その…』

｢Aが嫌なら私はいらないと思っている。
第1優先はお前だからな。だがもしAが
私との子を望んでくれるのならば、嬉しく思う｣

『あなたとの子が…ｯほしい、です』



ポロリと目から雫が落ちた

生理現象なのだから仕方がない


その涙をゴツゴツとした大きな手が拭うの

優しく拭うのよ


それから額をくっつけて笑いあってキスをして、

私ね、あなたとまた出逢えて良かったと思ってるの

きっと他の人だったら、ひとりのままだったら、
寂しい人生を終えていたわ



深くなる口付けに、無惨さんの首に腕を回す




『今からします？』

｢そうだな、…だが今夜はやめとこう｣

『えっ、』



ドライヤーをソファーに置き
私の膝下に手を差し込まれ寝室に向かう



｢そういうのは明日、よく話し合ってからだ。
冷静になった頭で慎重にいきたい｣

『…うん』



その言葉を聞いて、
やっぱり貴方と結婚して良かったと心の底から思った



『じゃあ今夜はもう寝ます？』

｢いいや、抱き潰す｣

『ふふっ お手柔らかにお願いします…』

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