たとえあなたが鬼でなくても 下

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彼は自分のことを鬼だと言った

人を喰らう鬼だと



｢今から1000年も前の事だ。

病に冒され、寿命の短かった私の元に
前世のAが嫁いできた。

生意気な奴だった｣









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『無惨様、無惨様……いい加減起きてくださいまし』

｢まだ寝る。ほっといてくれ｣

『朝餉があります』

｢食欲がない｣



食欲が無いって…
昨晩から何も食べないじゃないですか

せっかく作ってくださったのよ？
食べないと失礼でしょう

もしかして食べさせて欲しいの？そういうこと？



｢断じて違う。｣

『じゃあ食べてくださいな』



ほら、と掛け布団を引き剥がしても
一向に起きる気配はしない

なんなの？


仕方ないなぁと思いつつ、やはり幼稚だなと
何枚も重ねた重い服を数枚脱いで同じ布団に入る

あら、暖かい。


どうしたの？と私に背を向けている旦那様に
抱きつき後ろから問いかけてみる

しかし何も答えてくれない


こうやって2人で無言のまま過ごしていると、
襖の向こうから誰かの声が聞こえてくる




ｰ穢れらしいｰ

ｰあの二人は厄だｰ

ｰ早く消えてくれないかしらｰ

ｰやめなさいよ、聞こえるでしょうにｰ

ｰどうせ反論できやしませんってｰ



嗚呼、なるほどね。そういう事でしたか


そっと彼の耳に手を重ねて聞こえなくなるようにした



『生きててくれて、ありがとうございます。』

｢惨めだと思ったか｣

『いいえ、私は貴方様をお慕い申しておりますよ』

｢戯けた事を｣

『ならばこちらを見てください』



不貞腐れたお顔が間近にある。

そんなに眉間に皺を寄せちゃって、
グリグリと指をその皺を押せばやめろと言いながらも
手は弾き飛ばされないのでそのまま頬へと撫でる

不細工ねと言えば怒られてしまった



『私は厄ではなく吉と思っておりますよ』

｢慰めなどいらぬ｣

『本当よ？だって私、今 仕合わせなんですもの』

｢……そうか｣

『えぇ、そうよ』



十分に寝たことですしいい加減起きましょう？

朝餉が冷めてしまいます









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無惨様と別の病にかかった私の体はもう持たない



彼が青い薬を飲んだ後、突如消えてしまった



次にあった時、彼は鬼となっていて、私は死んだ



彼に呪いの言葉を告げて、死んだ






＿＿＿＿＿＿いつか一緒に城下町に出掛けましょう




呪いの言葉だった。

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