たとえあなたが人でなくても 下

平安:壱 ページ25

｢まだ子をなすことが出来ないってどういうことです？なんのために あなたみたいな者を迎え入れたと思ってますの？この約立たず｣

『申し訳ありません、義母上様』




あれ以降手を出されることは無かった

そんな雰囲気になったことすらなかった

つまり私と彼は交わっていない

だから子供なんて出来るはずがない

けど彼らからしたら子を成すのが私の役目なのに
どうして産めないのだとココ最近毎日責めに来る

正直黙って欲しい。耳にたこができそうだ



｢あなたより遅くに結婚した人は皆出来たというのにあなたってきたらどうして｣


知らねぇよ。

そんな愚痴は心の奥底に閉まった


目の前の義母の愚痴を右耳から左耳に通す

中身は聞いていない。何回も言われ続けていることだ
復唱できるようにまでなった

今回はどれぐらい時間がかかるのだろうか。

いまから旦那様のお身体を
拭きに行かなければならないのです
邪魔だ邪魔。とっとと○にやがれこのﾋﾟｰｰｰ野郎


思考回路が日に日に酷くなっていく

まぁ、実家に比べりゃあこれさえ我慢してれば
楽なもんだから我慢するけどさ


『はい…はい、そうです…申し訳ありません』



同じ言葉を言われて同じ言葉を返す

早く帰りたい




｢何をしている｣

｢む、無惨さんっ｣

｢何故早く戻ってこないのだ｣

『申し訳ありません。
義母上様に呼び止められまして…』



使い人に肩を貸してもらいながらやってきたのは
私の夫である無惨様だった

先程の会話が聞こえていたらしく、
これ以上言及するなと言い放つ



｢しかし無惨さん｣

｢煩い。元から体調が優れないのだ。此奴に非は無い｣




庇って、くれた？

いくら自分の親だろうと母親と長男とでは
長男の方が位が高いため何も言えなくなったのか
顔を真っ赤にさせて出ていかれた


｢早くしろ｣

『はい、今行きます』








．







．








二人っきりになったところで聞いてみた




『助けてくれたのですか？』

｢煩かっただけだ。他意はない｣

『ありがとうございます』

｢他意はないと言って………泣くな｣

『だって、辛がった..んですもｯの』



本音言うと苦しかった

だから助けてくれたことが嬉しかった



｢何かあれば私に言え。
大抵の事はなんとかなるだろう｣

『ん…』




頭を撫でてくれたその手は温かい

久しぶりに泣いた気がする



｢鼻水をつけるな汚い｣
『やだ』
｢巫山戯るな｣



なんだ、素直じゃないだけなんだ

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