たとえあなたが人でなくても 下

平安:壱 ページ24

祝言は、小さな会だった



誰も心からお祝いなんてしない寂しい会



惨めね、私も貴方様も







｢必要最低限関わるなと最初に言ったはずだが？｣

『今夜は初夜でございます。
貴方様の母上様に連れてこられました』



重い溜息をしては｢あの野郎…｣と
ご自身の母親に文句を言う


まぁいいんじゃないの？

お互い生きることを望まれない同士
お似合いだと思うわ


私も家を繁栄させるため あなたに嫁いだのです。
成すべきことは心得てます



いくら待っても手を出されないので自ら脱いでいく

1枚、1枚と丁寧に艶をのせて相手に欲を持たせる様に



｢何をしている｣

『わかりませんか？』



最後の1枚で止められた

その前までは見向きもしなかったくせに



｢そんなにしたいのならば其の望み、叶えてやろう｣

『あっ、ちょ……ん''ｯ』



急に引き寄せられたかと思えば頬を強く捕まれ
強引に口吸いをされてしまった

こんなのが初めてだなんて、悲しい



いきなりの事で混乱し、油断してたところで
唇をこじ開けられて変な気持ちになる

それがなんとも気持ちの良いんだか悪いんだか、
よくわからなくなって全身に鳥肌が立った



押し倒されて抵抗できなくなったので
乱暴にするんじゃないよと睨もうとするも、
見下ろしたその顔があまりにも怖くって悲鳴を上げた









_____覚悟は出来てた。そう、覚悟は





家のため、お荷物だった私を育ててくれた
お父上様とお母上様に恩を返すため

…兄上様の邪魔にならないために


どんな事も受け入れようと思っていた



しかし、いざとなると怖くて震えてしまう

これからされることに恐怖づいてしまう






｢泣くほどなら最初から夜遣いなんてしに来るな｣

『…ぇ？』




たった一言言って、自分の布団の中へお戻りになった

何が何だかよくわからず身を整え脱いだ服を全部着る




『あの、鬼舞辻さま』

｢うるさい、お前も鬼舞辻だ。早く寝ろ鬱陶しい｣


『あ、はい』






何がどうなってるのかは未だ理解できていない
しかし行為はしないみたいだ。その事に安堵する


寝息がもう聞こえたのでどうすることも出来ずに
私も隣に敷かれていた布団に入っては寝た


なるべく離れて、お互い背を向けて


これが私達の初夜の出来事である。







｢………｣

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