夜を操る者たち 参 【鬼滅の刃】

佰肆拾伍夜 ページ50

―竈門炭治郎視点―

俺たちの訓練途中からAが参加するようになった

最初は初めての訓練だからな！
俺がしっかりと長男として教えるべきだ！

なんて意気込んでいた

Aは俺たちの初日と同様、訓練で何をするかと言った説明を一通り受けていた
時折”なるほど！”や”分かりました！”なんて意気込んで相づちまでうっているのが窺える

その姿に俺は”やっぱり愛らしいな”なんて訓練最中にもかかわらず思ってしまう

自分の気持ちを自覚してからと言うもの、Aの事がより一層周りに比べて特別に見えた
動作一つ一つに目が引かれてしまう感じだ

はっ！って、俺は何考えてるんだ！
今は訓練に集中集中！

なんて思ってはみるもののカナヲからは相変わらず一勝をとる事ができないでいた
やっぱり強すぎる…

「説明は以上です！では、Aさんは最初に私と薬湯の訓練を始めましょう」
「はいっ！」

俺がずぶ濡れにされて行く中でAはまずアオイさんと訓練する事になった
”手加減無用で行きますので！”と言ったアオイさんに俺はAもこんなのかけられて濡れてしまうのか？！
と不安になった

しかし、俺はその直後…
静真さんのあの言葉を思い出す事となった

「まぁ、とりあえず君たち3人は先に”Aを超えるところから始めましょう”」

と言う言葉を…―

たんっ！…こつっ！

それは一瞬だった

俺の目では何が起こったのか目視できないほどの速さだった

一瞬湯飲みを遮る音と机に湯飲みが当たる音
それだけがしたのはなんとなく把握できた

「えっ…」

それは対戦していたアオイさんも一緒だったらしく声が漏れていた
いや、正しくは俺を含め善逸と伊之助もだ
後はきよちゃん、すみちゃん、なほちゃんも同様らしい

『薬湯をかけて濡らす訳にもいきません…』

当の本人は”これでも私の勝ちと言う事でよろしいのでしょうか？”と言いながら薬湯が入った湯飲みをアオイさんの目の前まで持って行き止めていた

「は、はい…それでも構いません」
『わぁ！私の勝ちですね！』

戸惑うアオイさんの返答をよそに本人はすごく嬉しそうにしている

「A…っ！」

俺は驚きのあまり開いた口が塞がらない状態でAの名前を呼んだ

『炭治郎くん！私勝ちましたよ！』

うん、無邪気に喜ぶ姿もすごく可愛いぞ…A
可愛いけど…―

今のは一体どういう事だったんだっ？！

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