夜を操る者たち 弐 【鬼滅の刃】

伍拾陸夜 ページ9

―我妻善逸視点―

『た、炭治郎くん…！』

見て、ほら！！
Aちゃんもちょっと引いてるよ？！

「お前は鬼殺隊員じゃないのか？！何故善逸が刀を抜かないか分からないのか？！隊員同士でいたずらに刀を抜くのは御法度だからだ！」

た、炭治郎の顔…本気で怒ってる…

「それをお前は一方的に痛めつけて…楽しいのか？！」

見ると炭治郎の顔は心の底から怒っている表情だった

炭治郎…俺のために…

「卑劣…極まりない！」
「がはっ…！ごほっごほっ…！そう言うことか…悪かったな」

あ、猪頭が謝って来た
炭治郎の言葉で寝転び咳き込みながらも謝って来る

あ、ようやく分かってくれたのか！
何だ、話せば…―

「じゃあ、素手でやり合おう！」

全然分かってなかったー！！

「いや、全く分かってない気がする！」

炭治郎、それ俺もすごく思うよ！！

「まず…―」

炭治郎が説明しようとするも猪頭はそのまま炭治郎へと突っ込んでいく

「隊員同士でやり合うのがだめなんだ！」

炭治郎の説明なんてお構いなしに炭治郎に仕掛けていく猪頭

うわー…あいつなんつー動きだ…
炭治郎にあばら折られたのに…

『あらあらあら…』

隣ではAちゃんが少し困り顔で頬に手を当て2人の動向を見ている
ほら、完全にAちゃん困って引いてんじゃん！俺も引くよ…

てか、困った顔のAちゃんも可愛いよぉぉ！

「と言うか実は、炭治郎も御法度に触れるんじゃないか…？折ってるし…」

その後も止まることのない攻防戦を見ていた俺は正一くんに顔の汚れと血を拭って貰いながら呟いた

『止めなくてはいけませんね…』
「Aちゃん…？」

しばらく様子を見ていたAちゃんだったがぽつりと呟くとすっ…と立ち上がった

そして鞘をつけたままAちゃんは刀を握った

え、えっ？Aちゃん？何するの？

『炭治郎くん！今から私が動きを鈍らせるので炭治郎くんはそのまま動きを封じてください！』

えぇぇっ！Aちゃん？！何する気なの？！

すっ…！

Aちゃんはそれだけ言うと素早く移動すると炭治郎と猪頭に近づき鞘で猪頭の足を押さえ間に割って入った

「あぁ？何だてめぇ？」
『申し訳ありませんが悪く思わないでください』

どすっ！どすっ…どすっ！

猪頭にそれだけ言うとAちゃんは鞘の付いたままの刀を持ち替え
猪頭の足と腹と首を刀で殴った

『今ですっ！』

Aちゃんのその言葉を合図に炭治郎は“ちょっと落ち着け”と頭突きをかましたのだった

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