It takes you away 【前編】

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『あ…』



俺の返事を聞く前に スマホが震えたらしくて
Aさんは電話に出た

なんとなくわかる その相手はヤットさんでしょ？

うん うん って言ってるだけのAさん
その顔は少し曇って見えた

好きな人からの電話なのに
なんでそんな顔すんの？



『帰んなきゃ……』



電話を切ったAさんはそう言った

ヤットさん来てる
どこにいんの？早く帰って来い

って言われたって｡



岳「じゃあ 送ります｡また一緒に謝りましょう」



俺､謝る必要あんのかな とも思うけど
1人では帰せない

Aさんを車に乗せ
そんな遠くない あのマンションへ走らせた



『ごめんね､ホント面倒くさいことばっかり』

岳「大丈夫です､また岳ちゃーんって言ってくれますよ､ヤットさん」

『どうかな… きっと がっくんに迷惑かける』

岳「もう慣れました笑 だからいくらでも迷惑かけて下さい」

『……そんなこと言って…知らないからね､ホントにすっごい迷惑かけるよ？』

岳「そんなに？笑」



もうこうなったら 殴られたっていーや

ってヤットさんは多分怒んないだろ
この前みたいに｡
だって俺は安全だと思ってるでしょ？
篤人くんと違って｡


でも これで終わりにしよう
もう今度こそ 終わらせよう
会えない状況 作って､電話も出ないようにして

俺は多分 この人が好きなんだ
だけど どうやったってこの人は
俺のものにはならないだろうから

まだ芽生えたばかりの今のうちに 消してしまうんだ｡



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