２話 ページ2
新しく近侍に就いた兼さんは、結構張り切っていた。
「おい！内番の割り当て、まだしてねぇぜ？」
「出陣！？なんだ、俺じゃねぇのか。」
「任務、ちゃんとやっているようだな。感心、感心。」
「あんた、遠征行かせたか？」
「おいおい、もっとテキパキしようぜ。」
と、まあ口聞きの悪さも兼さんらしいや。
国広要素が入っている気もするが…。
まあ良い。
そして、朝起こすのは私の役目。
まだ眠いとか言って目を擦る兼さんがなんだか可愛い。
最近は国広が妬いてくるから一緒に起こしに行っている。
やはり兼さんは国広の方が早く起きる。
いや、私が優し過ぎるのか？
目の前で国広に起きて、起きてと強引に布団を剥がされている兼さんを見て思った。
『山姥切の時はこんなこと無かったな…。』
誰それ構わずガツンと言われたり。
色々と指図されたり。
でも、朝は私が起こしてあげたり。
ちょっとした言い争いだって。
山姥切といた時は絶対出来なかった事。
少し感傷に浸っていると、ふと肩に暖かさを感じた。
「…おい、どうした？大丈夫か？」
振り向くと、兼さんが髪を結い終えて心配そうに私を見つめていた。
心配そうな…瞳で…。
��心配��していた。
でも、心配なんて、いらない。
私の心配はしなくて良いから。
無駄に心配されるのが鬱陶しくて、嫌で。
だから、私は叫んでしまった。
『どうして！みんな心配した顔で私を見るの！ 私はまだ………！』
そこまで言って正気に戻る。
国広は俯いて、苦しげな表情を浮かべていた。
兼さんは驚きで固まっている。
そんな二人を交互に見て、私は下を向いた。
『ごめん、なんでもないの…。』
国広は目に涙をためて去って行った。
私は縋るような瞳で兼さんを見る。
『兼さん…』
私から離れてしまわないで。
お願い、ずっと側にいて。
それが…言えなかった。
兼さんは私を虚ろな瞳で見つめていた。
その瞳が、私には冷たく突き刺さる��氷の矢��のように感じられた。
私はどうしても、みんなに心を開けてない。
みんなの考えてる事が分からなくて、それ故の恐怖心が私を飲み込む。
兼さん…私は貴方の何者ですか…？
私は縋る瞳を兼さんから逸らした。
一人俯き、そっと泣く。
どうせ誰も助けちゃくれないんだから。
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作者名：津姫 | 作成日時：2017年9月3日 0時
