伍拾捌 ページ10
・
殺し合いが始まってどれくらい経っただろうか
「…おい。」
珍しく、私がへたり込む前に攻撃を止めた甚爾
そんな彼に私は思わず顔を顰め、様子を窺う。
「お前、手加減でもしてんのか。」
『…は?』
手加減…?何言って──
「最初は確かに殺気もあって、イー感じに殺りがいがあったんだが…
途中から殺気が引っ込み始めてんぞ。」
『ッ』
「──まさかと思うが、今更怖気づいたか?」
…怖気づいたか…か
怖気づいたってのは、少し違う。
私は構えを解き、甚爾の顔が見れずに俯く。
私は───
『…さっき、自分は薄情者だつったじゃん』
言いながら顔を上げ、私はヘラリと笑う。
『───でも、それって甚爾だと別らしいわ。』
…上手く、笑えてるだろうか。
見つめる先は、面倒そうなものでもなければ、いつものニヤケ面でもない
強くなりたいかと私に聞いてきた時の、滅多に見れない甚爾の真面目な顔。
『屋敷の奴らがくれなかったものを、甚爾は沢山くれたから。』
朝から夕まで一緒にいてくれた
強くしてくれた
ご飯をご馳走してくれた
愚痴に付き合ってくれた
素でいさせてくれた
私を───「加茂A」として受け入れてくれて、否定しないでいてくれた
認めて、くれた。
『それに、私は救われた
“私”が“私”としていられた。』
私を救ってくれた、ガサツで不器用な人。
そんな人を、自分の手で殺すって?
『ッ無理だろ…』
他の人間に持ち合わせている情はないけど
この人には、正直面倒な情がある。
多分、この人のために他を殺せって言われたら殺すし
この人のために死ねと言われたら自害する。
それぐらい、面倒で重くて反吐が出る執着心
女々しくて気持ち悪い、私には分からない感情である“ナニか”
それを、この人は知っているだろうか。
「…そうかよ。」
小さく呟いた瞬間、目の前から姿を消す甚爾
気配は…背後か
甚爾のその行動で私は悟った。
「じゃあ死ね。」
この人は
身を任せるように目を瞑った瞬間、項に手刀が入れられ、私の意識はそこでシャットアウトした。
684人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Aya - めっちゃ面白いです!!続き楽しみにしてます!! (2022年4月16日 22時) (レス) @page36 id: f2234a2195 (このIDを非表示/違反報告)
菜奈(プロフ) - 続き楽しみにしてます! (2022年1月25日 0時) (レス) @page36 id: 51a9e342b5 (このIDを非表示/違反報告)
Kk(プロフ) - ツバメさん» ありがとうございます!それは最初考えていましたが、やはり原作を改変したくない…という思いもありましたので、このまま行かせて頂きます、すみません…(汗)つきましてはifストーリーでツバメ様の案を書かせて頂きますので、これからもどうぞよろしくお願いします! (2021年6月13日 10時) (レス) id: 1e9bbdba10 (このIDを非表示/違反報告)
Kk(プロフ) - 識さん» あああ、勿体ないお言葉ありがとうございます!! (2021年6月13日 10時) (レス) id: 1e9bbdba10 (このIDを非表示/違反報告)
ツバメ - もっと見たいです更新期待してます 出来れば甚爾を渋谷編の生き返りでは無く五条との戦いの後も生存+主人公と一緒が良いです (2021年6月12日 23時) (レス) id: 020ea1b549 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:KK | 作成日時:2021年3月11日 9時