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第5話 ページ6






兄ちゃんは、根っからの善人で、優しい人だった。
でも、両親を殺されたことをきっかけに警察官を目指したことは、知っている。
けれど、警察学校に通っている時に、両親を殺した犯人を捕まえたと言っていた時は、憑き物が落ちた様に見えて、そこからは真摯に警察官を目指していたように見えていた。


でも、それが何故か、突然「やめる」なんて言い始めて。


当初の私は信じられなかった。それと同時に「何か事情があったんじゃないか」と思い始めて。



その事情が何なのか、兄ちゃんの口から語られたことで明らかとなった。

兄ちゃんは交番勤務で経験を積んだ後、公安警察に抜擢されたという。




「とある組織に潜入することも決まってたから、尚更お前や兄さんに連絡とることはできなかった。

3年前については…俺は自決したんだ。
潜入中、俺が公安警察だって組織にバレ、1人の幹部に追い詰められたんだ。
けど偶然か必然か、その幹部も潜入捜査官だった。しかもFBI。
ここで死ぬべきじゃないと言われたが、誰かが来る足音が聞こえてきて…とある情報が入った携帯ごと、心臓を拳銃で打ち抜いた。」

「…」

「…カッコ悪いだろ?」




壮絶な内容だった。一般人の私には到底理解できないような。でも、これだけは言える。


兄ちゃんは、誰かを守るために死んだんだって。

…だからそんな苦しそうな顔で、笑わないでよ。

















「カッコ悪くない。兄ちゃんはその情報を知られないために行動を起こしたんでしょ?
それが、守るために必要なことだったんでしょ?

そんなの、カッコ悪いわけないじゃん。優しくてカッコよくて正義感の強い、自慢の兄ちゃんだよ。

死んじゃったことは悲しいけど、こうして話して触れることができてるから、それで十分。」




真剣な顔をして、その澄んだ瞳で真っ直ぐ俺の目を見て、真っ直ぐで素直な言葉を俺に投げかける姿を見て、変わらないなと思った。


小さい頃から感情豊かで素直な妹。思ったことははっきり口に出す、そんな子だった。それが変わることなく成長したのだと思うと嬉しくて、同時にその成長をちゃんと見てやれなかったことが申し訳なくて。

本当こんな妹をもった俺は───




「…ありがとな。」

「私の方こそ、辛いのに話してくれてありがとう。」




本当に、幸せ者だ。






ニカッと笑うその姿も、幼い頃と何も変わっていなかった。

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作者名: | 作成日時:2022年7月4日 1時

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