加茂さん家の天与呪縛ちゃんその0＿2 救済奇譚 (ページ2)

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陸拾壱ページ2

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人とは、時として窮地にぶつかるといつもの倍以上の力を発揮する

らしい

何回コケかけ、実際に転げ

けど、時間が惜しいと土を払う間もなく立ち上がって走り

『────甚爾!!!!!!』

「「!?」」

何とか、間に合った

ゼェゼェと肩で息をしながら、私は宙に浮かぶ五条と甚爾の間に割って入る

甚爾の手には鎖に繋がった呪具

五条は何やらヤバそうな技を繰り出す態勢

…どうやらここで決着がつく、というところだった

「…そこを退けA」

「A、癪だけどそのオッサンの言う通りにしろ」

『断る

それでも続けるってなら、私に構わず戦り合えばいい』

私は死んでもお前らの間に入るから

そう言うと2人の顔は歪められ、それぞれ腕を下ろす

『…これが呪術師にとって何を示すか

それは十二分に理解しているけど…

それでも、…ごめん五条

私は甚爾に死んでほしくない』

真っ直ぐと目を注げば、五条が今までにないくらいに顔を歪める

…呪術師にとっての裏切り行為だろうと

五条、傑さん、健ちゃん、雄ちゃん

夜蛾センや冥ちゃんを裏切るようなマネだろうと、私は───

『…だから、甚爾を殺すなら

私を殺してからにして』

この言葉に嘘なんてない

それを分かっているからこそだろうか、五条の日本人離れした綺麗な顔が更に歪められた

…自分にとっての敵が、まさか仲間にとって大切な存在だなんて

似たような感覚だから、私も分かる

形容しがたいくらいに、辛いし苦しいよな

暫くの沈黙の後、五条が地面へと足をつけた

俯かれた顔から、どんな表情かなんて窺うことはできない

ただ、いいものではないことだけは分かる

「…1つ聞かせろ

お前にとって、ソイツは何だ?」

五条にそう聞かれ、私は間髪入れずに口を開く

『本人目の前で言うの恥ずかしいけど

私にとって唯一無二の存在』

「ｯ、…」

私の言葉を聞いて体を固まらせた五条は、暫く黙りこくり

何も言わずこの場をあとにした

…本当に、ごめん

身長はデカい癖に、やけに小さく見えるその背に

心の中で謝る

裏切ったからとか、それ以上に…

それ以上のナニかが、何でか分からないけど

謝らないといけない気がしたから

そして、私は静かに後ろへ振り返る

そこには、いつもよりも真剣な顔をした甚爾が

ジッと私を見つめていた