帰ってきた「君のその手に」【完結】

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その時目の前にナイロン袋が当てられて、これゆっくり吸ってっ？て切羽詰まった崎本部長の声。




・・・あぁ、これが、発作ってやつなのか。



マジでやばいやつだ、確かに。



袋の口を吸い込んで少しだけ呼吸が出来て
脳みそが生き返るような感覚で、わずかな思考が働く。





「そうだ、ゆっくりだぞ？ゆっくり、ゆっくり、」




背中をさすられながら崎本部長の声がとても安心出来た。









「・・・・A？」









なんとか息が出来るようになった時
頭上から宏光の声が聞こえて、見上げると息を切らした宏光が立ってた。





「あぁ、北山、」




崎本部長のほっとしたような声とともに宏光が私に駆け寄ってきた。




「おまっ、どうしたんだ？体震えてんじゃんっ、･･･飲みすぎた？」




袋を手にうずくまってたらそう思われても当然で。



でも、宏光に抱き抱えられそうになった時
無意識に崎本部長に寄りかかってしまった。





「･･･やだ、あっち行って、」


「はぁ？何言ってんだ、おまえ、酔っ払ってんの？」


「いやっ、違うんだ、北山、伊藤はな？」


「やだ！！宏光の顔見たくないのっっ、」






呼吸が出来たばかりで絞り出すように声を張り上げて
一番びっくりしたのは多分私だ。





宏光も一瞬びっくりした表情をした後
みるみると険しくなる顔。





「崎本部長、どういう事ですか？」




低い声で崎本部長に詰め寄るような声。
バカじゃないの？崎本部長に怒るなんて見当違いもいい所だよ。



そう言いたいけど、大声を張り上げた後でまた呼吸がしにくくてはぁはぁと息を切らす事しか出来ない。





「北山、違うから。冷静になれって。」


「なにを？どう冷静になれって言うんですか？やっぱりAを崎本部長がいるとこになんか行かせなきゃ良かったっすよ！」


「だから違うって！伊藤、過呼吸でな？」


「過呼吸ってなに？過呼吸ってのと、今崎本部長と抱き合ってんのとなんか関係あんのっ？」





バカ宏光っ！
あまりにも的外れな事ばっか言う宏光に情けなくて涙が出てきた。



呼吸は相変わらず苦しいし喋れないのがもどかしい。

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