23話【過去】 ページ32
ある日、黒尾が見た倉名の姿はあまりにも変わっていた。
｢おいお前…それ…｣
包帯の巻かれた頭、杖をついて右足を引きずっている。
｢わぁ黒尾!!久しぶり！｣
いつもと変わらず陽気に手を振ってくる倉名。
｢おい、それどうしたんだよ!!｣
腕をつかむと顔を歪める
｢った…｣
｢!!わりぃ。大丈夫か？｣
｢ん。全然、ただの事故だから。｣
どうやら話を聞くと練習中後ろから飛んできたボールに気付かず足を痛めそれと同時にアタックが頭に当たってしまったらしい。
｢…無理するなって。｣
｢大丈夫、大丈夫!!｣
その時は笑顔で終わったがその傷が治ってすぐまた新しい傷ができる。黒尾はどう考えても、いくら強豪とはいえ疑問を感じた。
倉名のトスはあまりにも人を魅了した。
優しくそっと、その人のトップポイントを捉え、空間認識能力がずば抜けていることは彼女を見る全ての人が感じていた。が、それがチームを嫉妬に狂わせていることに気付いたのはもう1人の幼馴染、孤爪研磨だった。
それはある日、2人が倉名の試合を見に行った時だった。美華学園はいつものように圧勝していた。
｢やっぱり強いと心にスキができるのかな。｣
｢…だな。一所懸命なの倉名だけじゃねぇか。｣
他のメンバーは入れ替わりが激しく、レシーブやサーブのミスが目立ってきた。
｢クロ、A狙われてる。｣
早々聞き慣れない孤爪の焦った声。黒尾も異常を感じていた。
サーブミスは倉名の頭に当たりバックアタックは手足に当たっていた。
その度に彼女は顔を歪めていたがすぐに声を出してチームを鼓舞していた。
彼女は…気付かない、ふりをしていた。
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作者名：ミューゼス | 作成日時：2017年6月24日 22時
