距離感【黒尾鉄朗】 (ページ30)

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21話【過去】ページ30

倉名は小学校低学年の頃に小学校で仲良くなった男子、黒尾に連れられバレーボールチームに入った。

｢黒尾は男子なのにバレーボールするの？｣

｢知らねーのかよ倉名!!男子のバレーは女子よりすげーパワーで進むんだぜ？すっげぇかっけーんだー！だから俺はバレーをしたい!!｣

｢へぇー!!｣

それほど男女の力の差が出ていない幼少期、彼等は共にバレーボールを楽しんでいた。
しかし1年後、男子バレークラブは無くなった。ただ単に人数が少なくなったからだ。そして黒尾と幼馴染の孤爪は小学校の体育館から姿を消した。そしてほぼ同時に倉名までもがいなくなった。

｢ねぇ、黒尾。｣

｢お？どうした？｣

｢私ね、スカウトされた。｣

｢は!?どこに!?サッカーチームにでもか!?｣

｢違うわ!!バレーの何だっけ…美華学園のジュニアチーム…だったっけ？｣

｢どこだそこ、みけ…学園？｣

｢ここらへん…じゃないや東京でトップレベルの強い中学校と高校のジュニアの監督が前の試合見に来てたみたいで、スカウトされたの。｣

いつもなら飛び上がって喜ぶであろう倉名があまり元気がなさそうに告げてきたとても羨ましい話。

｢なに迷った顔してんだよ。胸張っていけ!!｣

｢でも今までみたいに黒尾と研磨とできなくなる…。｣

だんだん涙目になって俯く倉名。それを見て黒尾は焦ったように手を動かして早口で彼女を慰めた。ここまで思ってくれていることに彼の心は生まれて初めての苦しみを覚えたのであった。