【番外編】猫耳と黒魔術師 ページ23
昔々…いや、昔なのか未来なのか、異世界の話なのかはわかりませんが…魔王様が支配する世界がありました。
その魔王の侵略で灰となった町…ネコマ。
ネコマに住んでいた人々は散り散りになりました。一人の街の青年、クロオが魔王に命を売り自らも魔族の仲間入りをしたためでした。
地主の娘…Aだけを残しネコマの街は静かになったのでした。
｢ひーまー!!バレーも相手がいないと面白くないし本も読み飽きたし…｣
最初の数カ月は初めて自由な生活を送れる日々を謳歌していた彼女ですが食料だけ運んできてくれる商人達には付いていかずどれだけ退屈だと叫んでもネコマを離れようとはしませんでした。
仔猫のように自分の尻尾でじゃれても、退屈でしょうがありません。
おっと、みなさんご存知なかったのを忘れていました。
この少女の名前はA、獣人で真っ白い垂れたネコ耳と長い尻尾を蓄えたオッドアイの綺麗なメス猫です。
低く唸ってベットに寝転がり暇を持て余していた時、黒い魔法陣が浮かび上がりました。
｢!?｣
Aは飛び上がり警戒心を最大に持ち、恐怖に耐えていました。
その禍々しい光の中から出てきたのは…
｢クロ…？｣
懐かしい幼馴染でした。
｢おー久しぶり、A。｣
見慣れない角が二本生えた、変わってしまった幼馴染相手だろうが何だろうが心許せる存在がやっと近くに来てくれた喜びにAはクロオに飛び付きました。
｢クロ…クロ…さみしかった…たいくつだった。｣
｢そっか…今は甘えたタイムか？｣
クロオは抱き着く可愛い可愛い幼馴染を抱き締め返しながらやれやれと溜息をつきました。姿が変わってしまった今でも、彼女が何の躊躇いもなく飛び付いて甘えてくるとは思ってもいなかったから、とびきりの執着心と独占欲と愛おしさで強く抱きしめました。
｢ネコは気まぐれなの。｣
頭を押し付けグリグリとしてくる彼女。
所詮所有物への匂い付けの行為なのだがそれすらもクロオを刺激していました。
｢なぁA。｣
｢んにゃ？｣
｢俺のとこ来いよ。｣
なにも手を出さぬうちにと出した言葉。
やっと感動の再開から本題へと話が進んだのでした。
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作者名：ミューゼス | 作成日時：2017年6月24日 22時
