13話 ページ15
公園、いや正確に言うと河川敷。
河川敷に小さな遊具がポツポツと置かれている場所、そこが近所の子供にとっての公園だ。
そこは黒尾、研磨、倉名の幼馴染3人がバレーボールを練習していた場所でもある。
「早く来やがれ黒尾コノヤロォ…」
発散のしようがない恐怖をか細い、いつものような覇気がない声。
ベンチに縮こまった倉名はいつもよりもひとまわりもふたまわりも小さく見えているだろう。
「そんなこと言うなら拾ってあげませんヨー」
上から降ってきた声、何よりも望んでいたその声。
「私はっ…捨て猫じゃなぃ…もん!!」
緊張が全てを解けて倉名の目から止めどなく涙が溢れ出た。
「お、そうか?拾ってくださいって書いたダンボールに入ってそうだからつい、な。」
いつも通り胡散臭く笑う黒尾に倉名は残った涙を拭きながらキッと黒尾を睨んだ。
「バカァ…!!ボゲェ!!私は猫じゃなぃぃぃ」
どっかで聞いたことあるぞーボゲェって、と相変わらず笑う彼を睨む彼女。でも内心は凍りきっていた胸の辺りがじわっと暖かくなっているのが分かっていた。
「わかったから、ほら家行くぞ。」
力を入れて立とうとすると腕が震えて立てなくなっている倉名。
「ん。…んっ?…くろお、どうしよ…。」
もう歩き始めていて数メートル先にいる黒尾に声を掛ける。
「!?どうした!?」
「力入らなくて…動けない…。」
「…しゃーねーなァ。」
そう言って戻ってきて顔をグッと近付ける黒尾。前までからすると普通の距離だが距離を取っていた今までを置くと気付くその近さ。
その距離に混乱していると倉名の体がフワッと浮く。
「うぇ!?」
「騒ぐなよ。」
黒尾は倉名を姫抱きしたまま自宅へと帰って言った。
「…!?…!?」
脳の処理が追いつかず口を金魚のようにパクパクさせながら落ちまいと黒尾に抱きついている倉名。
彼女が喉の奥でずっと低く唸っているのを黒尾は聞き逃さなかった。
「〜っ…大丈夫、大丈夫。」
「うん…ありがと…。」
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作者名:ミューゼス | 作成日時:2017年6月24日 22時