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そんなことを思っていれば、彼の手が自分の方に伸びてきて、その手は彼女の頬を軽くつまみ上げる。
「もうちょっと口角を...。こう、ぐいっと!」
なんて言う言葉が耳に届いたその刹那。
ぐにぃぃ〜っと、彼女の顔…両方の頬っぺたを軽く引っ張りあげられて、クスクスと幼げに笑っている彼の姿に呆気にとられた。
ただただ鳩が豆鉄砲を食ったような表情で固まっている彼女の様子を見て、また彼が笑う。先程とは違く至って穏やかに、そして、温かい笑顔を浮かべている彼はゆっくりと口を開いた。
「練習の成果が出ているじゃないか。表情も豊かになって、以前より笑顔が柔らかい気がするよ。」
そう言って、彼女の頬をフニフニと触る手は温かくて、とても優しかったのだが直ぐにその手は離れてしまい、自分の頬には彼が触れた微かな温もりの余韻だけが残っている。
「ふふ、こんなことをしていたらシノブに『セクハラだ』って訴えられてしまうかな。」
「…それは、『セクハラされました』って言った方が良いフリですか?」
イタズラに笑い冗談めかしてそう呟いた彼につられて、彼女からも自然と笑みが零れた。
彼女の発言に対して「それは勘弁してほしい」と笑っている彼に更に笑いが込み上げてきて、先程までのどんよりとした気持ちが晴れやかになっていく、そんな気がするのはきっと気の所為ではないだろう。
気持ちが沈んでいた自分の様子を察して、彼がそんな事を言ったのかは分からない。
分からないが、そうだったら嬉しいし、彼ならその可能性は捨てきれないだろう。だからこそ、自分が良いように捉えようと思った。
自分でも思う。
きっと、今の笑顔は鏡越しに何度も見た不気味な笑顔じゃなくて、愛や景のように笑えているのではないか、と。
今日一日は、ずっと笑っていられるような気がした彼女だったか、実際はいつもと変わらず笑顔を見ることはなかった。
けれども、仲の良い人だけが気付く小さな小さな変化が、あったとかなかったとか____。
その日のお昼休み。
とある三人娘の会話の一部分。
「ん〜〜?しのちゃん何か良い事があったんですかぁ?」
「え?別に、特にはないけど。なんで?」
「いや、なんかね。いつもより表情が柔らかい気がするから」
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和綴(プロフ) - Laylaさん» わぁぁ!コメントありがとうございます!可愛いだなんて…嬉しい限りです。私の方こそ志暢が式波さんと恋愛関係を結べることになったなんて幻か妄想か?と常日頃考えておりますので…(笑)Layla様の応援の元、更新頑張ります! (2020年5月26日 23時) (レス) id: 3c22397930 (このIDを非表示/違反報告)
和綴(プロフ) - ホッケさん» コメントありがとうございます…!いえいえ、私の語彙力ではレイさんの魅力は伝わりきれてないですよ!?尊死だなんて…そう言って頂けますと嬉しい限りです。励みになります!ホッケさんも本編そして短編集?の更新頑張って下さいね!楽しみに待っております(笑) (2020年5月26日 23時) (レス) id: 3c22397930 (このIDを非表示/違反報告)
Layla - みんな可愛い。素敵です!!!!文才ありありじゃないですか!!!最高でした。愛ちゃん可愛い。うちの颯馬が志暢ちゃんと恋人関係を組めるなんて夢かな?と常に思っております、更新頑張って下さい!応援してます!! (2020年5月25日 10時) (レス) id: 1d01e49d2e (このIDを非表示/違反報告)
ホッケ(プロフ) - コメント失礼します。自キャラをこんなに魅力的に書いて下さり、ありがとうございます!尊死しました。文章も読みやすく、つい何回も読んでしまうぐらい中毒性があると言うか...本当に楽しませていただいてます! (2020年5月24日 16時) (レス) id: 0c6843aeae (このIDを非表示/違反報告)
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