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サラサラした髪のコウキからは、ふわっと自分と同じ香りがして。
なんだかこれまた、ちょっとだけむず痒い…なんて。
本当に、この家は思っているよりもずーっと広い。
なにか目印になるものを探しながら後ろをついて歩いていれば
お家の入口みたいな、まん丸のドアが見えてきた。
皇 ｢ここ、Aが好きに使っていいから｣
｢好きに…？｣
皇 ｢そう。入ってみる？｣
って言ってもここで寝るんだけどね(笑)って笑う彼が開けてくれたドア。
中を覗けば、まん丸の窓枠のそばに置かれたベッドの上
見るからに厚くてふかふかな布団が敷かれていた
皇 ｢ほら、入って入って｣
そっと押された背中に、私もそっと1歩部屋の中に踏み出して。
見渡したお部屋の中は、アンティーク調のチェストやクローゼットなんかも置かれていて
どこかのお嬢様が生活しているような空間みたい…。なんて。
皇 ｢ここ、昔お母さんが使ってたんだ。今はゲストルームみたいな感じの部屋になってるけど。｣
｢そうなんだ、…｣
皇 ｢ねえ、Aって慣れないベッドだと寝れないタイプとかだったりする？｣
｢ううん、私どこでも寝ちゃうタイプ。なんで…？｣
皇 ｢なら良かった(笑)
明日、ここら辺案内してあげる。だから朝起きれるようにしっかり寝れるといいなあって思って、｣
｢楽しみ…！ありがとう、コウキ。｣
皇 ｢ううん。…ちょっとは元気に、、なった、？｣
｢、！｣
私の表情を伺うように、そう聞いてきたコウキ。
さっき慰めてくれただけじゃなくて、その後もずっと
心配してくれていたんだ。
｢…なんだかね？ずっと、苦しかったんだけど｣
皇 ｢うん？｣
｢家にいても、飛び出しても…ずっと。
心がぎゅーって誰かに鷲掴みされてるみたいに、痛かった。
だけど、今はその時よりも少しだけ…軽い感じがする｣
さっき泣いてスッキリしたからかな。
あなたが、その場所を与えてくれたから…かな、？
分からないけど、今はとっても穏やかな気持ち。
皇 ｢よかった。じゃあまた明日ね。
おやすみA｣
｢おやすみなさい、コウキ。｣
パタンと閉まったドアの向こう、消えたコウキの背中に
なんだか少し寂しさを覚えて。
風に遊ばれるカーテンを避けながら、星が小さく光る夜空を
そっと眺めた。
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作者名：スイ. | 作成日時：2021年10月1日 20時
